なぜAll Blacks経験者を含むニュージーランドの選手たちは、日本でプレーすることを選ぶのでしょうか?
「条件が良いから」と説明されることもありますが、選手本人の言葉をたどると、新しい挑戦、キャリアの節目、家族、日本での生活、異なるラグビー環境など、いくつもの理由が重なっていることが分かります。
一人ひとりが日本をどうキャリアの中に位置づけているのかを見ると、NZから日本へ向かう選手の移動の意味を、より立体的に捉えられるでしょう。
目次
CHAPTER 1|なぜNZ選手は日本へ来る?
CHAPTER 2|キャリアの転換点としての日本
5. Richie Mo’unga|「新しいもの」を求めて日本へ
CHAPTER 3|日本で得られる新しい経験
9. 日本文化の中で生活する
10. 家族にとっても海外生活になる
11. League Oneは「キャリアの終着点」だけではない
CHAPTER 4|All Blacksとの関係はどうなる?
15. 一人ひとりの契約を見る必要がある
CHAPTER 5|選手の移動から日本とNZを見る
16. 選手と一緒に経験も国境を越える
18. 選手の移動は一方向ではない
最後まで読めば、NZ選手がなぜ日本を選ぶのかを、単なる移籍ではなく、一人ひとりのキャリアと人生の選択として、より理解しやすくなるでしょう。
CHAPTER 1|なぜNZ選手は日本へ来る?
1. 理由は「お金」だけではない
ニュージーランドの有名選手が日本のクラブへ加入すると、「日本の方が条件が良いからでは?」と思う人もいるかもしれません。
プロ選手の移籍では契約も重要な要素ですが、それだけで一人ひとりの日本行きの理由を説明することはできません。
実際に選手本人の言葉を見ると、日本を選ぶ背景には例えば次のような理由があります。
- 新しい挑戦をしたい
- 異なるラグビー環境でプレーしたい
- キャリアの節目で変化が欲しい
- 日本の文化や生活を経験したい
- 家族と新しい環境で暮らしたい
- 自分のキャリアの次の段階を考えたい
しかも、その組み合わせは選手によって違います。
「NZ選手はなぜ日本へ来るのか?」に、一つだけの答えがあるわけではありません。
2. NZ選手にとって日本はどんな選択肢なのか?
日本でプレーする形も、一つではありません。
例えば、次のようなケースがあります。
- NZでのキャリアを経て日本へ本格的に移る
- NZ Rugbyとの契約関係を保ちながら一定期間日本でプレーする
- 日本でプレーした後にNZへ戻る
- 短期間の日本経験を経て、より長く日本でプレーすることを選ぶ
つまり、NZ → Japanという一つの矢印だけを見ても、その中身は同じではありません。
ある選手にとっては新しいキャリアの始まりかもしれません。
別の選手にとっては、キャリアの途中に入る一定期間の経験かもしれません。
また別の選手にとっては、家族も含めた長期的な生活の選択になることもあります。
3. 選手によって日本の意味は違う
ここが、NZ選手の日本行きを理解するうえで重要なポイントです。
同じAll Blacks経験者でも、日本を選ぶ背景は一人ひとり違います。
- Richie Mo’unga|変化、新しい挑戦、異文化や家族との経験
- Sam Cane|一定期間の新しい経験から、後にはより長期的な日本でのキャリアへ
- Beauden Barrett|日本でプレーした後、NZへ戻りAll BlacksとSuper Rugbyへ
- TJ Perenara|長期契約による家族の安定や、その先のキャリアも考えた日本行き
だから、「All Blacks経験者が日本へ移籍した」という一行だけでは、その選手にとって日本がどんな意味を持つのかまでは分かりません。
移籍先だけでなく、その前後のキャリアを見る。
そうすると、同じNZから日本への移動でも、それぞれ違う物語が見えてきます。
CHAPTER 2|キャリアの転換点としての日本
4. Rugby World Cup後は大きな節目になる
ラグビー選手のキャリアには、いくつか大きな節目があります。
その一つがRugby World Cupです。
大会が終われば、選手によっては次の数年間について考えるタイミングになります。
- 次のWorld Cupを目指すのか
- 海外でプレーするのか
- 所属クラブを変えるのか
- 家族との生活をどうするのか
- 代表キャリアをいつまで続けるのか
実際、Richie Mo’ungaは2023 Rugby World Cupの後に日本へ移りました。
Sam Caneも2024年の日本行きについて、World Cup後が新しいことを経験する一つのタイミングだったという趣旨を語っています。
もちろん、World Cupが終わればNZ選手が日本へ来るという単純な法則ではありません。
ただ、選手が次のキャリアを考える節目の一つとして見ることはできるでしょう。
5. Richie Mo’unga|「新しいもの」を求めて日本へ
Richie Mo’ungaのケースは、日本を選ぶ理由を考えるうえで非常に分かりやすい例です。
Mo’ungaはCrusadersで長くプレーし、All Blacksとしても2度のRugby World Cupを経験しました。
そして2023 Rugby World Cup後、Toshiba Brave Lupus Tokyoへ移りました。
本人は日本を選んだ背景について、NZで長く同じ環境にいた中で、次のようなことを求めていたという趣旨を語っています。
- 変化
- リフレッシュ
- 新しい経験
- 異なる文化や生活
- 家族にとっての新しい挑戦
つまりMo’ungaは、NZで大きな成功を経験した後、新しい環境を求めて日本を選びました。
日本行きを「キャリアの終盤だから」とだけ説明してしまうと、この選択の意味を見落としてしまいます。
6. Sam Cane|一定期間日本でプレーするという選択
Sam Caneの最初の日本行きは、Mo’ungaとは別の形でした。
CaneはNZ Rugbyとの契約に含まれる、一定期間海外でプレーできる仕組みを利用して、2024年にSuntoryでプレーしました。
この時点では、NZラグビーを離れて完全に日本へ移る形ではありませんでした。
本人は日本での時間について、次のような期待を語っています。
- 新しいプレー環境を経験する
- 日本文化に触れる
- 新しい挑戦をする
- ラグビーと生活の両面で成長し、学ぶ
そしてNZ Rugbyの発表では、その後NZへ戻り、再びAll Blacksの選考対象になる予定とされていました。
つまり日本は、NZでのキャリアを終えた後の行き先だけでなく、NZでのキャリアの途中に入る新しい経験にもなり得ます。
7. 日本から再びNZへ戻る道もある
Beauden Barrettも、日本とNZを行き来した分かりやすい例です。
Barrettの流れを整理すると、次のようになります。
- 2023-24シーズン|Toyota Verblitzでプレー
- 2024年|NZへ戻り、All Blacksの選考対象に
- 2025年|BluesでSuper Rugby Pacificへ復帰
- 2025年|All Blacksにも選出
つまり、NZ → Japan → NZです。
海外でプレーすることと、NZでのキャリアを完全に終えることは同じではありません。
選手の契約や状況によっては、日本での経験を挟んでNZへ戻るキャリアもあります。
CHAPTER 3|日本で得られる新しい経験
8. 異なるラグビー環境でプレーする
選手が国を変えれば、単にユニフォームが変わるだけではありません。
例えば、日常のラグビー環境にもさまざまな違いがあります。
- チームメート
- コーチ
- 練習環境
- 試合のスタイル
- シーズンの進み方
- クラブの文化
Mo’ungaは実際にLeague Oneでプレーした後、日本のラグビーについて、展開の速さやトライの多さ、試合の面白さ、Competitionの競争力などを肯定的に語っています。
もちろん、日本で何を感じ、何を学ぶかは選手によって異なります。
それでも、NZで長くプレーしてきた選手にとって、異なるラグビー環境に入ること自体が新しい経験になります。
9. 日本文化の中で生活する
選手が日本へ来ると、変わるのはラグビーだけではありません。
生活そのものも変わります。
- 言葉
- 食事
- 街
- 人との接し方
- 季節
- 家族の生活環境
Sam Caneは、日本文化を経験することへの期待を語っています。
Ardie Saveaも日本でのプレーに加えて、日本の景色や文化を経験することへの期待を示していました。
こうして見ると、日本でプレーすることは、新しいクラブへの移籍であると同時に、別の国で暮らす経験でもあります。
10. 家族にとっても海外生活になる
選手の移動を考えるとき、見落とされやすいのが家族です。
選手が海外へ移れば、家族も一緒に生活環境を変えるケースがあります。
Mo’ungaは日本での生活について、子どもが日本の幼稚園へ通うことや、家族で異文化を経験することにも触れています。
また、日本では昼間に行われる試合も多く、試合後に家族と時間を過ごせることについても前向きに語っています。
TJ Perenaraも日本への移動を決める際、長期契約によって家族に安定した環境をつくれることを重要な要素として説明しています。
Sam Caneも、より長期的に日本でプレーする判断の中で、若い家族との時間を重視していました。
Player Movementを家族まで含めて見ると、関係するものは例えば次のように広がります。
- 配偶者
- 子ども
- 学校や幼稚園
- 生活環境
- 家族で過ごせる時間
つまり、選手の海外移籍はときに、一人の選手の転職ではなく、家族全体の移動でもあります。
11. League Oneは「キャリアの終着点」だけではない
日本でプレーする外国人選手について、「キャリアの最後に日本へ来る」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし現在の具体例を見ると、それだけでは説明できません。
- Richie Mo’unga|2023 Rugby World Cup直後に日本へ
- Sam Cane|NZ Rugbyとの契約関係を保ちながら一定期間日本でプレー
- Beauden Barrett|日本からNZへ戻り、All BlacksとSuper Rugby Pacificへ復帰
つまりLeague Oneは、キャリアの最後にだけ選ぶ場所ではありません。
選手によっては、キャリア途中の挑戦、新しい環境、次の数年間を過ごす場所、あるいはNZへ戻る前の期間にもなっています。
CHAPTER 4|All Blacksとの関係はどうなる?
12. 海外でプレーすることは大きなキャリア判断
All Blacksを目指すNZ選手にとって、海外でプレーすることは単なるクラブ変更ではありません。
例えば、次のような点を考える必要があります。
- どこでプレーするのか
- NZ Rugbyとの契約がどうなっているのか
- いつNZへ戻るのか
- 代表選考との関係がどうなるのか
だから有力選手が日本へ行くときは、日本でプレーすることとAll Blacksとの関係をどう組み合わせるのかも重要なポイントになります。
13. 一定期間の海外プレーと完全移籍は違う
ここで区別したいのが、NZ Rugbyとの契約関係を保ちながら一定期間海外でプレーするケースと、NZを離れて海外クラブを主な活動場所とするケースです。
Sam Caneの2024年の日本行きは前者でした。
そのため、NZへ戻った後にAll Blacksの選考対象となることがNZ Rugbyから明示されていました。
一方、NZでの契約や代表活動を終えて海外へ本格的に移る選手もいます。
外から見れば、どちらも「NZ選手が日本へ移った」ように見えます。
しかし、選手のキャリア上の意味は同じではありません。
14. Sam Caneのキャリアを見ると違いが分かる
Sam Caneのケースは、その違いを一人の選手の中で見ることができます。
日本との関係を時系列で見ると、次のようになります。
- 2024年|NZ Rugbyとの契約に含まれる仕組みを利用してSuntoryでプレー
- その後|NZへ戻り、All Blacksで再びプレー
- 2024年末|代表キャリアを終える
- 2025年から|Suntoryとの長期契約へ
つまり、
一定期間の日本 → NZ復帰 → より長期的な日本
と、日本との関係そのものが変化しています。
同じ選手でもキャリアの段階が変われば、日本を選ぶ意味も変わることがあります。
15. 一人ひとりの契約を見る必要がある
CaneやBarrettのケースでは、NZへ戻った後のAll Blacks選考についてNZ Rugbyから明確な説明がありました。
しかし、この二人のケースをそのまま全選手に当てはめることはできません。
同じLeague OneでプレーするNZ選手でも、例えば次の条件は異なります。
- NZ Rugbyとの契約
- All Blacksとの関係
- 日本での契約期間
- キャリアの段階
- NZへ戻る予定
したがって、海外でプレーする選手とAll Blacks選考との関係を見るときは、一人ひとりの契約と、その時点の状況を確認する必要があります。
CHAPTER 5|選手の移動から日本とNZを見る
16. 選手と一緒に経験も国境を越える
国境を越える選手は、それまでに経験してきたラグビーを持った一人のPlayerとして新しいチームへ加わります。
例えばNZから日本へ来る選手なら、これまでに次のような環境を経験している場合があります。
- 学校ラグビー
- 地域クラブ
- 州代表ラグビー
- Super Rugby
- All Blacksなどの代表活動
その選手が日本のクラブに加われば、それまでの経験を持った一人の選手として新しい環境に入ります。
そして、日本で得た経験もその後のキャリアの一部になります。
人が動くことで、二つのラグビー環境の間に新しい接点が生まれます。
17. 日本での時間が選手のキャリアに加わる
今回見てきた選手だけでも、日本で過ごす時間の意味はそれぞれ違います。
- Sam Cane|Suntoryでの時間
- Beauden Barrett|Toyota Verblitzでの時間
- Richie Mo’unga|Toshiba Brave Lupus Tokyoでの時間
- TJ Perenara|日本での新しいキャリアと家族の生活
しかし、日本でプレーした経験は、その後も一人ひとりのキャリアの一部として残ります。
そこには試合だけでなく、例えば次のような経験もあります。
- 日本で出会ったチームメート
- コーチやスタッフ
- ファンとの交流
- 家族で暮らした時間
- 異なるラグビー環境
- 日本文化の中での生活
こうした経験まで含めて考えると、選手の移動は単なる契約上の移籍よりも広い意味を持つことがあります。
18. 選手の移動は一方向ではない
ここまで見てきたのは主に、New Zealand → Japanという流れです。
しかし、日本とNZの選手の移動はそれだけではありません。
反対方向には、Japan → New Zealandがあります。
日本人選手がNZへ渡り、例えば次のような環境でラグビーに関わる可能性があります。
- 学校
- 地域クラブ
- 州代表ラグビー
- 育成環境
- より高いレベルのラグビー
もちろん、NZでどこまでプレーできるか、その道にどう入るかは、年齢、実力、滞在資格、所属先などによって大きく異なります。
次に見ていくのは、この反対側のMovementです。
日本人ラグビー選手がニュージーランドでプレーするには、どんな道があるのでしょうか?
そこからJapan × NZ Rugbyの地図を、反対方向から見ていきます。
知れば知るほど、もっと面白い。
ニュージーランドラグビー。
