League Oneを見ていると、ニュージーランド出身、あるいはNZラグビーで豊富な経験を積んだコーチの名前を頻繁に目にします。
その背景を見ると、単に「NZラグビーが強いから」だけではなく、コーチが国境を越えることで、その人が積み重ねてきた知識や経験も一緒に動いていることが見えてきます。
コーチの移動に注目すると、選手移籍とは少し違う、日本とNZラグビーの深いつながりが見えてくるかもしれません。
目次
CHAPTER 1|なぜNZのコーチが日本にいる?
1. League OneにはNZと深い関係を持つコーチが多い
2. 元All Blacksヘッドコーチも日本で指導している
CHAPTER 2|NZのコーチは何を日本へ持ってくる?
6. 若い選手を育ててきた経験
CHAPTER 3|実際にどんなコーチが日本で活躍している?
8. Dave Rennie|神戸からAll Blacksへ
9. Ian FosterとSteve Hansen|Toyota
11. ヘッドコーチだけではない
CHAPTER 4|日本で指導することはコーチにとって何を意味する?
13. 多様な背景を持つ選手と働く
14. 異なる文化・組織の中で指導する
CHAPTER 5|コーチの移動から見えるJapan × NZ
16. コーチが動くと知識も動く
最後まで読めば、NZのコーチが日本へ来ることが、単なる「外国人コーチの招聘」ではない理由が、きっと見えてくるでしょう。
CHAPTER 1|なぜNZのコーチが日本にいる?
1. League OneにはNZと深い関係を持つコーチが多い
Japan Rugby League Oneを見ると、ニュージーランド出身、またはNZラグビーで豊富な経験を積んだコーチが数多く指導してきました。
例えば、これまで日本のトップクラブでは、
- Robbie Deans
- Todd Blackadder
- Steve Hansen
- Ian Foster
- Dave Rennie
- Tabai Matson
- Wayne Pivac
など、NZや国際ラグビーと深い関係を持つコーチが活動してきました。
2026-27シーズンのToyota Verblitzでも、Ian Fosterがヘッドコーチ、Steve Hansenがチームコンサルタントを務めます。
つまり、NZと深い関係を持つコーチが日本にいることは、珍しい出来事ではありません。
日本とNZのプロラグビーをつなぐ、人材の大きな流れの一つとして見ることができます。
2. 元All Blacksヘッドコーチも日本で指導している
この関係を分かりやすく示すのが、All Blacksで指揮を執った経験を持つコーチたちです。
Steve HansenはAll Blacksのヘッドコーチとして2015 Rugby World Cupを制し、その後Toyota Verblitzに関わってきました。
Ian FosterもAll Blacksで長くアシスタントコーチを務めた後、2020年から2023年までヘッドコーチを担当しています。
そして2026-27シーズンのToyotaでは、
- Ian Foster|ヘッドコーチ
- Steve Hansen|チームコンサルタント
という体制になっています。
世界最高レベルの代表チームを率いた経験を持つコーチが、日本のクラブの中で仕事をしていることになります。
彼らが持っている経験は、肩書だけではありません。
- 国際代表レベルでの指導
- 世界大会
- 選手マネジメント
- コーチングチームの構築
- 高い競技レベルでのチーム環境づくり
など、長いキャリアを通して蓄積してきたものがあります。
3. 日本は「キャリアの終着点」とは限らない
海外の有名コーチが日本へ来ると、「キャリアの最後に日本で指導している」と見られることがあるかもしれません。
しかし、実際の動きはそれほど単純ではありません。
そのことを示す一つの例がDave Rennieです。
RennieはKobelco Kobe Steelersを率いていた2026年3月、All Blacksのヘッドコーチに任命されました。
それでもすぐに日本を離れたわけではありません。
NZ Rugbyは、RennieがLeague Oneシーズン終了まで神戸での責任を果たし、その後NZへ戻ることを発表しました。
そして2026年6月、神戸はFinalでKubota Spearsを22–13で破り、League One発足後初の優勝を果たします。
その後RennieはNZへ戻り、All Blacksを率いることになりました。
これは、League Oneで優勝したからAll Blacksのヘッドコーチに選ばれた、という意味ではありません。
RennieにはNZ U20、Chiefs、Glasgow Warriors、Wallabiesなど、長年にわたる幅広い指導実績があります。
重要なのは、
NZ → 海外 → 日本 → NZ
というコーチの移動が実際に起きていることです。
日本での指導は、必ずしもコーチのキャリアの終着点とは限りません。
CHAPTER 2|NZのコーチは何を日本へ持ってくる?
4. 世界トップレベルでの指導経験
NZのトップコーチが日本へ来るとき、その人の経歴や経験も一緒に国境を越えます。
例えば、彼らがこれまで関わってきた環境には、
- All Blacks
- Super Rugby
- New Zealand U20
- 州代表ラグビー
- 海外の代表チーム
- 海外のプロクラブ
などがあります。
Dave Rennieだけを見ても、New Zealand U20、Chiefs、Glasgow Warriors、Wallabies、Kobelco Kobe Steelersなど、複数の国と競技レベルで指導してきました。
New Zealand U20では2008年から2010年まで3年連続で世界大会を制し、Chiefsでは2012年と2013年にSuper Rugbyを連覇しています。
日本のクラブがこうしたコーチを迎えることは、さまざまなラグビー環境で積み重ねられてきた経験と接する機会にもなります。
5. 異なるトップレベルで培ったチームづくり
トップレベルのコーチの仕事は、試合の戦術を考えることだけではありません。
チームや役職によって異なりますが、例えば、
- シーズン全体の準備
- 選手起用
- 練習環境づくり
- 選手のパフォーマンス管理
- コーチ間の役割分担
- 若手選手の成長
- チーム文化の形成
など、さまざまな仕事があります。
そしてNZから日本へ来るコーチの中には、Super Rugbyだけでなく、年代別代表、海外クラブ、国際代表など複数の環境を経験してきた人もいます。
つまり日本のクラブが接するのは、「NZ式の攻撃」や「NZ式のディフェンス」といった一つの方法だけではありません。
異なる環境でチームをつくってきた経験そのものにも価値があると考えることができます。
6. 若い選手を育ててきた経験
NZから日本へ来るコーチの中には、トップチームだけでなく、若い選手の育成に関わってきた人もいます。
Dave Rennieはその一例です。
RennieはNew Zealand U20を率い、2008年から2010年まで3年連続で世界大会を制しました。
その後、Chiefs、Glasgow Warriors、Wallabies、Kobelco Kobe Steelersへと活動の場を広げています。
つまり、日本で指導するコーチの中には、
- 若い選手を育てる
- トップチームを率いる
- 国際代表を指導する
という異なる段階を経験してきた人もいます。
その経験が日本の選手育成に具体的にどのような影響を与えるのかは、コーチ本人やクラブ関係者への取材がなければ一概には言えません。
ただ、若手育成から国際代表まで経験したコーチが、日本のクラブの中で選手やスタッフと働いていること自体が、日本とNZの一つの接点になっています。
7. コーチングだけでなく組織づくりまで
コーチの移動がクラブに与える影響を考えるとき、グラウンドの中だけを見る必要はありません。
Todd Blackadderの例は、そのことを考えるうえで興味深いでしょう。
Blackadderは2019年から2025-26シーズンまで7シーズン、Toshiba Brave Lupus Tokyoのヘッドコーチを務めました。
そして2026-27シーズンからは、High Performance Director兼Advisorへ役割を移しています。
クラブの公式発表では、新しい役割で、
- 強化戦略
- 組織基盤の構築
- クラブの持続的な成長
などに関わるとされています。
これは、海外コーチが日本へ来て一定期間チームを指導し、そのまま去るという形だけではありません。
長くクラブに関わった人材の経験を、より広い強化や組織の領域へつなげる形も生まれています。
CHAPTER 3|実際にどんなコーチが日本で活躍している?
8. Dave Rennie|神戸からAll Blacksへ
Dave Rennieのキャリアは、日本とNZのコーチの移動を考えるうえで象徴的な事例です。
NZでは、
- Wellington Lions
- Manawatu Turbos
- New Zealand U20
- Chiefs
などで指導しました。
その後は、
- Glasgow Warriors
- Wallabies
- Kobelco Kobe Steelers
へと活動の場を広げています。
そして2026年3月、All Blacksのヘッドコーチに任命されました。
それでもLeague Oneシーズンの最後まで神戸を率い、2026年6月に優勝してからNZへ戻っています。
つまりRennieのキャリアをたどると、NZから海外へ出るだけではありません。
海外や日本で得た経験を持って、再びNZラグビーへ戻るという動きも見えてきます。
9. Ian FosterとSteve Hansen|Toyota
Toyota Verblitzでは、All Blacksを率いた2人のコーチが同じクラブに関わっています。
2025-26シーズンにはSteve Hansenがヘッドコーチ、Ian Fosterが共同コーチを務めました。
そして2026-27シーズンは、
- Ian Foster|ヘッドコーチ
- Steve Hansen|チームコンサルタント
という体制へ変わっています。
FosterはToyota加入時、日本ラグビーとLeague Oneの発展を見てきたことや、クラブの目指す方向に魅力を感じたことをコメントしています。
これは、本人が日本での仕事をどう捉えていたのかを知ることのできる一つの例です。
同時に、世界の国際代表レベルで豊富な経験を持つ複数のコーチが、日本の一つのクラブ環境で働いていることも分かります。
10. Todd Blackadder|東芝で7シーズン
Todd Blackadderは、日本で長期間指導してきたNZ出身コーチの一人です。
2019年から2025-26シーズンまで7シーズン、Toshiba Brave Lupus Tokyoのヘッドコーチを務めました。
そして2026-27シーズンからは、High Performance Director兼Advisorとしてクラブに残ります。
新しい役割では、強化戦略や組織基盤づくりにも関わります。
ここから見えるのは、海外コーチの役割が試合の采配だけではないことです。
長期間一つのクラブに関わることで、選手や他のコーチだけでなく、強化や組織というさらに広い領域へ関係が続いていくケースもあります。
11. ヘッドコーチだけではない
コーチの移動というと、Rennie、Foster、Hansen、Blackadderのような著名なヘッドコーチに目が向きやすくなります。
しかし、プロクラブのコーチング・強化体制にはさまざまな役割があります。
例えば、
- ヘッドコーチ
- アシスタントコーチ
- フォワード担当
- バックス担当
- アタック担当
- ディフェンス担当
- スキル担当
- パフォーマンス部門
- アドバイザー
- コンサルタント
などです。
クラブによって役職名や体制は異なります。
そして、すべての役職をNZ出身者が担当しているわけでもありません。
重要なのは、日本とNZをつなぐコーチ人材の動きを、数人の有名なヘッドコーチだけの話として見ないことです。
CHAPTER 4|日本で指導することはコーチにとって何を意味する?
12. League Oneというプロラグビー環境
なぜNZで経験を積んだコーチが日本へ来るのか。
その理由を一つに決めることはできません。
本人によって、キャリア、家族、契約、挑戦したいことなど、さまざまな事情があるでしょう。
一方、現在のLeague Oneが国際経験豊富な選手やコーチが集まるプロラグビーの環境であることは、日本で指導する意味を考えるうえで重要です。
Ian FosterもToyota加入時、日本ラグビーとLeague Oneの発展を見てきたことを語っています。
そしてDave Rennieのように、League Oneでクラブを率いた後、All Blacksへ戻るケースも実際に生まれています。
少なくとも、日本での指導を一律に「キャリアの最後」と考えるだけでは、現在のコーチの動きを説明できません。
13. 多様な背景を持つ選手と働く
League Oneのクラブには、日本人選手だけでなく、さまざまな国やラグビー環境を経験した選手が所属しています。
コーチは、例えば、
- 日本代表経験者
- NZ出身選手
- 他国の代表経験者
- 若い選手
- 経験豊富なベテラン
など、異なる背景を持つ選手たちと働きます。
言語や文化、これまで受けてきたコーチング、ラグビーに対する考え方も同じとは限りません。
そのような環境で一つのチームをつくることは、NZ国内だけで指導する場合とは異なる経験になるでしょう。
ただし、それが個々のコーチにとって日本を選ぶ直接の理由だったかどうかは、本人の言葉なしに決めつけることはできません。
14. 異なる文化・組織の中で指導する
海外でコーチをするということは、ラグビーの違いだけではなく、異なる文化や組織の中で働くことでもあります。
日本のクラブには、それぞれ、
- クラブの歴史
- 組織文化
- 選手構成
- スタッフ体制
- コミュニケーションの方法
があります。
NZで成功した方法が、そのまま日本でも同じように機能するとは限りません。
選手やスタッフとコミュニケーションを取り、その環境に合わせながらチームをつくる必要があります。
異なる文化の中で指導する経験が、コーチ自身の考え方にどのような変化を与えるのか。
これは外から断定するのではなく、実際に日本で指導したコーチ本人に聞いてみたいテーマです。
15. 日本から次のキャリアへ進むこともある
日本へ来たコーチが、その後もずっと日本で指導するとは限りません。
その後のキャリアには、さまざまな可能性があります。
- 日本で長く指導する
- 別のクラブへ移る
- 別の国へ移る
- 代表チームへ進む
- NZへ戻る
Dave Rennieは、その一つの具体例です。
日本でKobelco Kobe Steelersを率いた後、All BlacksのヘッドコーチとしてNZへ戻りました。
だから、コーチの移動を考えるときも、
NZ → Japan
という一方向だけを見るのでは不十分です。
人が国境を越え、また別の場所へ動いていく。
その長いキャリアの中に、日本が位置する場合があります。
CHAPTER 5|コーチの移動から見えるJapan × NZ
16. コーチが動くと知識も動く
選手が国を移るとき、最も分かりやすく動くのは「プレーする人」です。
コーチの場合は少し違います。
一人のコーチには、それまでさまざまな場所で積み重ねてきた経験があります。
例えば、
- 戦術
- 練習方法
- 選手育成
- チームづくり
- 選手とのコミュニケーション
- スタッフとの協働
- リーダーシップ
- 高い競技レベルでのチーム運営
などです。
もちろん、NZで得た知識がそのまま日本へ移植されるわけではありません。
日本の環境に合わせて変化することもあるでしょう。
それでも、人が国境を越えれば、異なる場所で蓄積された経験同士が出会います。
コーチが動けば、その人が持つ知識や経験も国境を越えて動く。
これが、コーチの移動をJapan × NZの視点から見る面白さです。
17. コーチが去った後、日本側に何が残る?
海外コーチを迎える価値を、その人が在籍している間の勝敗だけで測る必要はないでしょう。
もう一つ考えたい問いがあります。
そのコーチがクラブを離れた後、何が残るのか?
例えば、考えられるものには、
- 日本人コーチとの知識共有
- 若手選手への指導経験
- 練習環境やチーム内の基準
- コーチング体制
- 強化の考え方
- 組織文化への影響
などがあります。
ただし、実際に何がどの程度残ったのかは、外から簡単に判断できません。
Todd Blackadderが7シーズンのヘッドコーチを経て、強化戦略や組織基盤に関わる役割へ移ったことは、この問いを考えるうえで興味深い事例です。
一人のコーチの経験が、どのようにクラブ自身の知識や仕組みへ変わっていくのか。
そこまで見ると、コーチの移動が持つ意味はさらに大きくなります。
18. 人の移動が両国ラグビーの関係を深くする
日本とNZのラグビーの関係を考えると、代表戦や選手移籍が最初に思い浮かぶかもしれません。
しかし、その間を動いているのは選手だけではありません。
NZで経験を積んだコーチが日本へ来る。
日本の選手やコーチ、スタッフと一緒に働く。
そして、その後またNZや別の国へ移ることもある。
その過程では、人だけではなく、
- 知識
- 経験
- 考え方
- 人間関係
- ラグビー文化
- 新しい機会
も行き来していきます。
だから、日本とNZのラグビーをつないでいるのは試合だけではありません。
人が国境を越え、その人と一緒に知識や経験が行き来すること。
コーチの移動もまた、日本とNZのラグビーを深く結びつけている一つの接点なのです。
知れば知るほど、もっと面白い。
ニュージーランドラグビー。
