日本とニュージーランドのラグビー交流というと、代表戦やプロ選手の行き来を思い浮かべるかもしれません。
しかし両国をつないでいるのは、トップレベルのラグビーだけではありません。地域のクラブや子どもたち、コーチ、保護者、ボランティアの間にも、国境を越えた交流があります。
一つのクラブと一つのクラブから始まる関係をたどると、ラグビーが地域と地域をつなぐ力を持っていることが、きっと見えてくるでしょう。
目次
CHAPTER 1|ラグビー交流はトップレベルだけではない
CHAPTER 2|NZのジュニアラグビーを知る
CHAPTER 3|日本とNZのクラブは実際につながっている
8. Massey RugbyとKasuga Little Ruggers
10. 日本からNZへ、NZから日本へ
11. 子どもだけでなく家族もつながる
CHAPTER 4|クラブ同士なら何を交流できる?
12. 子ども同士が一緒にプレーする
13. コーチ同士が考え方を共有する
15. ラグビーから地域そのものを知る
CHAPTER 5|小さな交流から何が生まれる?
18. ラグビーが地域と地域をつなぐ
最後まで読めば、日本とNZのラグビー交流が、代表やプロだけでなく、子ども・家族・クラブ・地域コミュニティの間でも生まれていることを、より具体的にイメージできるでしょう。
CHAPTER 1|ラグビー交流はトップレベルだけではない
1. 日本とNZをつなぐ、もう一つのラグビーの世界
Japan × NZのラグビーには、さまざまな接点があります。
- 代表チームが対戦する
- NZ選手がLeague Oneでプレーする
- コーチが国境を越えて働く
- 若い選手が相手国の育成環境を経験する
しかし、もっと身近なところにも交流の入口があります。
それが、地域のラグビークラブです。
日本のラグビースクールや地域クラブと、NZの地域クラブ。
大きなスタジアムではなく、いつものグラウンドから始まるJapan × NZもあります。
2. NZ各地にある地域ラグビークラブ
NZ各地には、数多くの地域ラグビークラブがあります。
そこでは子どもから大人まで、さまざまな人がラグビーに関わっています。
NZラグビーというとAll BlacksやSuper Rugbyが最初に見えますが、その日常を支えているのは全国各地の地域ラグビーです。
週末になれば、各地のグラウンドで試合が行われます。
そこへ集まるのは選手だけではありません。
- 家族
- コーチ
- レフェリー
- チームマネージャー
- クラブスタッフ
- ボランティア
地域クラブは、単にトップ選手を送り出すためだけの場所ではありません。
その地域で人がラグビーに関わり続けるための場所でもあります。
3. クラブは選手だけの場所ではない
NZ Rugbyによると、シーズン中には毎週5,000以上の試合が行われています。
そして16万人以上の選手に加えて、
- 約13,000人のコーチ
- 約1,600人のレフェリー
- 20,000人以上のマネージャー、ボランティア、運営関係者
などがラグビーに関わっています。
クラブを支える役割も一つではありません。
チームを運営する人もいれば、グラウンドを整える人、クラブ運営に関わる人もいます。
だからJapan × NZのクラブ交流を考えるときも、交流するのは選手だけとは限りません。
選手、コーチ、保護者、家族、ボランティア。
地域クラブには、人と人がつながる入口がたくさんあります。
CHAPTER 2|NZのジュニアラグビーを知る
4. 子どもたちはどこでラグビーをしている?
NZでは、ジュニアラグビーが地域ラグビーを構成する重要な世界の一つです。
NZ Rugbyのジュニアラグビーは、Years 1–8、概ね5歳からU13までを対象としています。
子どもたちは地域クラブなどでチームに入り、練習や試合を経験します。
ただし、大人とまったく同じラグビーを、そのまま小さな子どもにさせるわけではありません。
年代や発達段階に応じて、
- フィールドの大きさ
- チーム人数
- ルール
- コンタクト
- スクラムなどのセットプレー
が調整されます。
子どもが成長しながら、段階的にラグビーを経験していく環境になっています。
5. ラグビーの方を子どもの成長に合わせる
NZ Rugbyの現在のジュニアラグビーでは、子どもを大人のラグビーに合わせるのではなく、ラグビーの方を子どもの成長段階に合わせるという考え方が重視されています。
例えば、小人数でプレーする期間を長くすることで、
- より多くボールに触れる
- より多くプレーに関わる
- タックルなどを経験する機会を増やす
- ラグビーを楽しむ
ことにつなげようとしています。
もちろん、その中から将来高いレベルへ進む選手もいるでしょう。
しかし、すべての子どもがプロを目指してラグビーをしているわけではありません。
まずラグビーをプレーし、楽しみ、続けられる環境をつくる。
それもジュニアラグビーの大切な役割です。
6. 週末のラグビーに家族とボランティアが集まる
ジュニアラグビーの試合に行くと、そこにいるのは子どもたちだけではありません。
- コーチ
- レフェリー
- 保護者
- チームを運営する人
- 兄弟姉妹
- 地域のボランティア
など、多くの人が関わります。
NZ Rugbyも、ラグビーを家族や地域の人々が集まる場所として位置づけています。
つまりジュニアラグビーは、子どもたちのスポーツであると同時に、家族や地域の人たちがラグビーを通して関わる場所でもあります。
7. 子どものラグビーが地域コミュニティをつくる
一人の子どもがクラブに入る。
すると、その子だけがラグビーと関わるとは限りません。
- 保護者が試合を見に来る
- 誰かがコーチを手伝う
- チームマネージャーになる
- クラブイベントに参加する
- 他の家族と知り合う
ということもあります。
そうやって、子どものラグビーを中心に人間関係が広がっていくことがあります。
だからジュニアラグビーを見るときは、
子ども → 家族 → クラブ → 地域コミュニティ
まで見ると、NZの地域ラグビーがより立体的に見えてきます。
CHAPTER 3|日本とNZのクラブは実際につながっている
8. Massey RugbyとKasuga Little Ruggers
では、日本とNZの地域クラブが実際につながることはあるのでしょうか。
その具体例の一つが、AucklandのMassey Rugby Football Clubと、日本のKasuga Little Ruggers Clubの交流です。
両クラブは、ジュニアラグビーを通じたスポーツ・文化交流を長年続けてきました。
興味深いのは、どちらか一方が相手国を一度訪問しただけではないことです。
日本からNZへ。
そしてNZから日本へ。
互いに訪問し合う関係が、世代を越えて続いています。
9. 交流は1990年から続いている
Massey Rugbyの公式記録によると、両クラブの最初の交流は1990年まで遡ります。
その際には、日本側から、
- 子ども90人
- 大人50人
がNZを訪れました。
日本の子どもたちはMassey側の家庭に滞在し、NZでの生活を経験しています。
さらに、この関係が生まれるきっかけ自体は1987年まで遡ります。
別のNZクラブと日本との交流をきっかけに、新しいクラブ同士の関係が生まれ、MasseyとKasugaの長期交流につながりました。
一つのつながりが、次のつながりを生んだ。
そこから30年以上にわたる関係が始まりました。
10. 日本からNZへ、NZから日本へ
Masseyの記録をたどると、交流は一方向ではありません。
例えば、
- 2007年|Kasugaから子ども48人、大人16人がMasseyを訪問
- 2010年|Masseyが日本を訪問
- 2013年|Kasugaが再びNZを訪問
- 2016年|Massey Juniors 53人が日本を訪問し、約10日間滞在
という相互訪問が続きました。
そして2024年にも、Masseyから、
- Junior Club Members 100人
- Supporting Adults 100人
が日本を訪れています。
Kasuga側の家庭が子どもたちを受け入れ、文化や生活を紹介し、ラグビーでは7試合が行われました。
つまり、これは昔の一度きりの交流ではありません。
現在まで続いているJapan × NZの地域ラグビー交流です。
11. 子どもだけでなく家族もつながる
この交流で動いてきたのは、子どもたちだけではありません。
大人も一緒に相手国を訪れています。
さらに、子どもたちを受け入れるホストファミリーも関わってきました。
Massey Rugbyも、この交流を通じて日本とNZの家族の間に強い結びつきが生まれたと振り返っています。
ここが、地域クラブ交流の面白いところです。
- 子ども同士がラグビーをする
- コーチ同士が話す
- 保護者同士が出会う
- 家族が相手国の子どもを迎える
交流の中心にはラグビーがあります。
しかし、そこから生まれる関係はラグビーだけにとどまるとは限りません。
CHAPTER 4|クラブ同士なら何を交流できる?
12. 子ども同士が一緒にプレーする
クラブ交流で最も分かりやすいのは、やはりラグビーです。
- 試合をする
- 一緒に練習する
- 同じボールを追いかける
言葉が完全に通じなくても、同じラグビーを知っていれば、一緒にプレーすることができます。
また、交流の形は試合だけである必要もありません。
年代や競技レベル、訪問の目的に合わせて、合同トレーニングや交流イベントなど、さまざまな形が考えられます。
大切なのは、勝敗だけではなく、同じグラウンドで一緒にラグビーを経験することです。
13. コーチ同士が考え方を共有する
交流できるのは選手だけではありません。
クラブ同士がつながれば、コーチ同士にも互いを知る機会が生まれます。
例えば、
- ジュニアラグビーをどう教えるか
- 子どもにどんな声をかけるか
- 練習をどう組み立てるか
- 安全にプレーするために何を重視するか
- 子どもがラグビーを楽しめる環境をどうつくるか
といったテーマを共有することも考えられます。
日本とNZでは、クラブの仕組みや文化、ラグビーを取り巻く環境が同じとは限りません。
だからこそ、どちらが正しいかを決めるのではなく、「相手はどう考えているのだろう?」と知ること自体が交流になります。
14. 家族・ボランティアも交流に参加できる
クラブ交流を地域コミュニティとして考えると、さらに対象が広がります。
選手とコーチだけでなく、
- 保護者
- ホストファミリー
- チームマネージャー
- クラブスタッフ
- ボランティア
- 地域の人
も交流に関われます。
例えば、訪問チームを地域で迎える。
一緒に食事をする。
クラブハウスで交流する。
相手国の家族と話す。
そうした時間も、クラブ同士の交流の一部になり得ます。
15. ラグビーから地域そのものを知る
海外のクラブを訪れるなら、経験はグラウンドの中だけではありません。
- 違う国の町を見る
- 違う家庭や生活に触れる
- 一緒に食事をする
- 地域の人と話す
- そしてラグビーをする
Article 33で見たラグビー留学と共通する部分もあります。
しかしArticle 34で中心になるのは、一人の留学ではありません。
地域コミュニティが、別の地域コミュニティを訪ねること。
ラグビーを入口に、相手の地域そのものを知ることができます。
CHAPTER 5|小さな交流から何が生まれる?
16. 国際交流に大きな組織は必ずしも必要ではない
Japan × NZのラグビー交流をつくるために、必ずしも最初からNZ RugbyやJRFU、Super Rugbyクラブのような大きな組織同士が動く必要はありません。
MasseyとKasugaの事例が示しているのは、もっと小さな単位からでも交流を始められるということです。
- 一つのクラブ
- 一つのラグビースクール
- 一人のコーチ
- 一つの家族
そこから最初の関係が生まれる可能性があります。
もちろん、実際に未成年者を含む海外交流を行う場合には、交流内容に応じた安全管理や旅行、保護者同意、競技上の手続きなどを確認する必要があります。
それでも、関係の最初の入口まで大きなものである必要はありません。
17. 一度の遠征から、世代を越えて続く関係へ
国際交流というと、一度海外へ行って試合をして帰ってくる姿を想像するかもしれません。
しかしMasseyとKasugaの関係は違います。
1990年から交流が続き、2024年にも大規模な日本訪問が行われました。
さらにMassey側では、2027年にKasugaをNZで受け入れ、2030年に再び日本を訪問する計画も示されています。
つまり、
訪ねる → 迎える → また訪ねる
という関係が、世代を越えて続いています。
一度のイベントではなく、関係そのものを積み重ねていく。
それが、クラブ同士だからこそつくれる国際交流の一つの形です。
18. ラグビーが地域と地域をつなぐ
日本とNZは遠く離れています。
言葉も違います。
文化も違います。
それでも、同じ楕円球を追いかけている地域があります。
一つのクラブが、海の向こうにある一つのクラブと出会う。
子ども同士がプレーする。
コーチが話す。
家族が出会う。
そして数年後、次の子どもたちがまた相手国を訪ねる。
国と国をつなぐ前に、人と人がつながる。
そこから、家族と家族、クラブとクラブ、地域と地域の関係へ広がっていくことがあります。
地域のラグビークラブは、日本とニュージーランドをつなぐ、最も身近な入口の一つなのかもしれません。
知れば知るほど、もっと面白い。
ニュージーランドラグビー。