ニュージーランドのクラブラグビーを見ていると、「U85kg」という日本ではあまり見慣れないカテゴリーに出会うことがあります。
これは年齢や競技レベルではなく、体重を基準に参加条件を設けるラグビーです。
その世界をたどっていくと、地域のクラブ大会から全国大会、さらにNZ代表まで広がった、ニュージーランドならではのクラブラグビーの一面が見えてきます。
目次
CHAPTER 1|U85kgラグビーとは?
2. なぜ体重で分けるの?
3. どんな選手がプレーする?
CHAPTER 2|U85kgはどこでプレーされている?
4. 地域ごとに大会の形は違う
CHAPTER 3|全国大会はどうなっている?
CHAPTER 4|クラブの先には何がある?
10. NZ U85kg代表の誕生
11. スリランカ代表との国際試合
CHAPTER 5|U85kgから見えるNZクラブラグビー
13. 大きさだけで決まらない競技環境
14. ラグビーを続けるもう一つの入口
最後まで読めば、U85kgを単なる「85kg以下の選手のカテゴリー」としてではなく、より多くの人がラグビーを続けるための競技環境として、より理解しやすくなるでしょう。
CHAPTER 1|U85kgラグビーとは?
1. 85kgを基準にするラグビー
U85kgは、体重制限を設けたラグビーです。
ニュージーランドラグビー(NZR)は、この競技をWeight-Restricted Rugby(体重制限ラグビー)として位置づけています。
一般的なシニアのクラブラグビーでは、同じカテゴリーの中でも選手の体格には大きな差があります。
一方、U85kgでは体重に参加条件を設けることで、大きな体格差を抑えた環境でラグビーをプレーできるようにしています。
ただし、「85kg以下なら誰でもそのまま試合に出られる」という意味ではありません。
大会ごとに登録、年齢、体重などの参加条件があり、例えば全国大会では試合当日に定められた体重条件を満たすことが求められます。
2. なぜ体重で分けるの?
ラグビーのカテゴリーというと、U18やU20のように年齢で分ける仕組みを思い浮かべる人も多いでしょう。
しかしU85kgが基準にしているのは年齢ではなく体重です。
NZRは、体格差を抑えることで、
- スピード
- フィットネス
- 判断力
- 技術
といった要素をより生かしやすい競技環境としてU85kgを紹介しています。
つまり、単純に「身体の小さい選手だけがプレーするラグビー」というより、体格とは異なる強みを発揮できる競技環境をつくることに意味があります。
3. どんな選手がプレーする?
U85kgには、一つの決まったタイプの選手だけが集まるわけではありません。
学校を卒業してクラブラグビーへ進む選手もいれば、他のシニアカテゴリーでプレーした経験を持つ選手、しばらくラグビーから離れた後に戻ってくる選手もいます。
NZRも、U85kgを高校年代からクラブへの移行や、成人になってからもラグビーを続けるための競技環境の一つとして位置づけています。
ここに、U85kgを理解する一つのポイントがあります。
「誰が一番大きいか」ではなく、「この体重の中でどうプレーするか」。
その条件が、一般的なシニアラグビーとは少し違った競技環境を生み出しています。
CHAPTER 2|U85kgはどこでプレーされている?
4. 地域ごとに大会の形は違う
U85kgを理解するときに大切なのが、ニュージーランド全国で一つの地域大会が行われているわけではないという点です。
クラブラグビーの仕組みそのものと同じように、U85kgの競技環境も地域によって異なります。
地域大会を持つ場所もあれば、参加チーム数や大会方式も地域によって違います。
そのため、「ニュージーランドのU85kgはこういうリーグ」と一つの形だけで説明することはできません。
5. ウェリントンでは長い歴史がある
その代表的な地域の一つがウェリントンです。
ウェリントンでは、現在のU85kgにつながる体重制限カテゴリーが1996年から地域大会として行われてきました。
2026年には8クラブがU85kg大会に参加。
最初のラウンドではJC Bowlを争い、その後はDivision 1とDivision 2に分かれて、それぞれ別のトロフィーを争う大会構造になっています。
U85kgが単発のイベントではなく、地域クラブラグビーの中に長く存在してきた競技カテゴリーであることが分かる例です。
6. カンタベリーでも競技環境が広がっている
一方、すべての地域がウェリントンと同じ歴史を持つわけではありません。
カンタベリーでは近年、U85kgの競技環境が改めて広がっています。
2026年のSouthern Alps Ultra U85kg Competitionには5チームが参加。
カンタベリーラグビーはこのカテゴリーを、競技性を保ちながら、プレミアとは異なる形でラグビーを続けられる選択肢として紹介しています。
ここでも見えてくるのは、同じU85kgでも、その地域に合った形で大会がつくられているということです。
CHAPTER 3|全国大会はどうなっている?
7. U85kgナショナル・クラブ・カップ
地域ごとに異なるU85kgのチームが、全国レベルでぶつかる舞台があります。
U85kgナショナル・クラブ・カップ(Under 85kg National Club Cup)です。
NZRが2020年に始めた全国規模のクラブ大会で、各地のクラブが参加するトーナメント方式の大会です。
地域大会とは別に、クラブが全国のU85kgチームと競える舞台ができたことで、このカテゴリーに新しい目標が加わりました。
8. 2026年は過去最多52チーム
2026年のU85kgナショナル・クラブ・カップには、過去最多となる52チームが参加しました。
オークランドやウェリントン、カンタベリーだけではありません。
ノースハーバー、カウンティーズ・マヌカウ、ワイカト、ベイ・オブ・プレンティ、タラナキ、サウス・カンタベリーなど、各地からチームが参加しています。
そして2026年9月、ノースハーバー・スタジアムで行われた決勝では、シルバーデールのU85kgチームがポーネケを26–17で破り、初の全国タイトルを獲得しました。
地域のクラブチームが、全国タイトルを目指して戦う。
それが現在のU85kgの大きな魅力の一つになっています。
9. 地域から全国へ。勝ち進むと各地のクラブと対戦
2026年大会では、序盤の対戦は大きくノース、セントラル、サウスの地域に分けて行われました。
そして勝ち残ったチームが準々決勝から地域の枠を越え、全国のクラブと対戦していきます。
つまりU85kgには、
- 普段プレーする地域のクラブラグビー
- 全国のクラブと競うナショナル・クラブ・カップ
という異なる競技機会があります。
普段は地域コミュニティの中でプレーしている選手たちが、勝ち進めばニュージーランド各地のクラブと対戦できる。
ここにも、クラブラグビーと全国舞台がつながる面白さがあります。
CHAPTER 4|クラブの先には何がある?
10. NZ U85kg代表の誕生
U85kgの世界は、クラブ大会だけでは終わりません。
2024年、NZRは初の公式NZ U85kg代表スコッドを発表しました。
それ以前にも体重制限ラグビーの代表選考やチーム編成の例はありましたが、NZRによる公式代表として実際に海外遠征へ向かったのは新しい展開です。
2025年にはNZ U85kg代表がスリランカへ遠征しました。
地域のクラブラグビーから始まるカテゴリーに、ニュージーランドを代表して海外でプレーする機会まで生まれたのです。
11. スリランカ代表との国際試合
NZ U85kg代表が対戦したのは、スリランカの男子代表です。
2025年の初遠征に続き、2026年にも再びスリランカへ遠征し、2試合を行いました。
ここで興味深いのは、相手がU85kgのチームではなく、体重制限のないスリランカ代表だったことです。
クラブの体重制限カテゴリーから選ばれた選手たちが、国際舞台では異なる体格やプレースタイルを持つ相手と戦う。
U85kgが、地域クラブラグビーの枠を越えて新しい経験につながっていることが分かります。
12. クラブ選手にもNZ代表という目標が生まれた
もちろん、U85kgでプレーすればそのまま代表へ進めるという単純な仕組みではありません。
しかし代表選考では、ナショナル・クラブ・カップや地域大会でのパフォーマンスも評価されています。
それまで地域のクラブでU85kgをプレーしていた選手に、
「ニュージーランドを代表してプレーする」
という新しい可能性が加わりました。
これは、U85kgというカテゴリーそのものの意味を大きく広げた変化といえるでしょう。
CHAPTER 5|U85kgから見えるNZクラブラグビー
13. 大きさだけで決まらない競技環境
ラグビーでは、身体の大きさが大きな強みになる場面があります。
だからこそU85kgでは、あえて体重という条件を設けています。
その中では、スピード、フィットネス、技術、判断、チームワークといった別の強みが、より重要になります。
これは「通常のラグビーより優れている」という意味ではありません。
違う条件をつくることで、違うタイプの選手が力を発揮できる競技環境をつくっているということです。
14. ラグビーを続けるもう一つの入口
U85kgの価値は、試合そのものだけではありません。
学校を卒業したあと。
プレミアでプレーすることを目指さないとき。
一度ラグビーから離れたあと。
それでもラグビーを続けたい、もう一度プレーしたいと思ったときに、別の競技環境がある。
U85kgは、そうした選択肢の一つになっています。
クラブに複数のカテゴリーが存在する意味は、単に選手を競技レベルで分けることではありません。
さまざまな人が、自分に合った形でラグビーとの関係を続けられること。
U85kgを見ると、その考え方がとても分かりやすく見えてきます。
15. U85kgはクラブの多様性を象徴している
U85kgは、ニュージーランドのクラブラグビー全体から見れば一つのカテゴリーです。
しかし、その一つを深く見ていくだけでも、クラブラグビーが単なる「トップチームの試合」ではないことが分かります。
地域によって大会の形が違う。
クラブ同士で競う地域大会がある。
全国大会がある。
そして今では、NZ代表として海外でプレーする機会まで生まれています。
U85kgを「体重制限のあるラグビー」とだけ見ると、その一部しか見えません。
体格とは別の入口をつくり、より多くの人がラグビーを続けられる場所を残していく。
その仕組みまで見ていくと、ニュージーランドのクラブラグビーが持つもう一つの面白さが見えてきます。
知れば知るほど、もっと面白い。ニュージーランドラグビー。
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