オールブラックスとは?歴史・ハカ・仕組みから楽しみ方まで完全ガイド

ニュージーランドラグビーと聞いて、最初にオールブラックス(All Blacks)を思い浮かべる人は多いでしょう。

黒いジャージー、試合前のハカ(Haka:マオリ文化に根ざした伝統的な表現)、そして世界の強豪と戦い続けてきた歴史。

でも、オールブラックスを「ニュージーランドの強い代表チーム」として見るだけでは、まだその面白さの入口に立ったばかりです。

選手がどこからやってくるのか。スーパーラグビーとはどうつながっているのか。なぜ黒いジャージーやハカがこれほど特別なのか。そして、ニュージーランドの人々にとってオールブラックスとはどんな存在なのか。

オールブラックスを知っていくと、その向こう側にある地域、チーム、人、歴史、文化、そしてニュージーランドの日常まで見えてきます。

この記事では、オールブラックスの基本から、その世界をもっと深く知る方法まで、一つずつたどっていきます。

CHAPTER 1|まずオールブラックスを知る

1. オールブラックスとは?

オールブラックスは、ニュージーランドの男子15人制ラグビー代表チームです。

ニュージーランド国内の特定の都市や地域を代表するクラブチームではありません。

ブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、クルセイダーズ、ハイランダーズなどが戦うスーパーラグビー・パシフィック(Super Rugby Pacific:ニュージーランドなどのプロチームが参加するラグビー大会)とは異なり、ニュージーランドを代表して世界各国とテストマッチ(国・地域の代表同士が戦う国際試合)を戦います。

その歴史は100年以上。

オールブラックスは長い歴史の中で世界のトップレベルで戦い続け、ラグビーワールドカップでも複数回の優勝を経験してきました。

しかし、オールブラックスの存在感は成績だけでは説明できません。

  • 黒いジャージー
  • シルバーファーン(Silver Fern:銀色のシダをモチーフにしたニュージーランドの象徴)
  • ハカ

そして、それを受け継いできた何世代もの選手たち。

オールブラックスは、一つの代表チームであると同時に、ニュージーランドラグビーを世界に伝える最も象徴的な存在の一つでもあります。

2. なぜオールブラックスは世界的に有名なのか

理由の一つは、もちろん強さです。

オールブラックスは長期間にわたり国際ラグビーのトップレベルに位置し、多くの国とのテストマッチで歴史を積み重ねてきました。

しかし、「強い代表チーム」はオールブラックスだけではありません。

それでもオールブラックスが世界中で特別な認知を得てきた背景には、いくつもの要素があります。

  • 黒を基調としたジャージー
  • シルバーファーンのエンブレム
  • 試合前に行われるハカ
  • 世代を超えて受け継がれてきた選手たち

そして、ラグビーがニュージーランドの社会や地域コミュニティの中に深く存在してきた歴史。

これらが重なり合って、「オールブラックス」というチームならではの強い個性や存在感をつくっています。

だからこそオールブラックスを見るときには、勝敗だけを見る方法もあれば、その背後にあるニュージーランドそのものを見る方法もあります。

3. オールブラックスという名前はどこから来た?

ニュージーランド政府のNZHistoryでは、「All Blacks」という呼び名はチームの黒いユニフォームに由来すると説明されています。

「All Blacks」という名前が広く知られるようになった大きなきっかけが、1905年のニュージーランド代表による北半球遠征です。

1905年の遠征を通じてこの名称は広く知られるようになり、その後、ニュージーランド代表を象徴する名前として定着していきました。

このチームは後に「Originals(オリジナルズ)」として知られるようになり、遠征を通じてニュージーランドラグビーの存在を強く印象づけました。

現在では「All Blacks」という名前そのものが、世界のラグビーを代表する存在の一つとして知られています。

CHAPTER 2|オールブラックスはどうできている?

4. 誰がオールブラックスに選ばれる?

オールブラックスは代表チームです。

つまり、毎年同じメンバーで活動する一つのクラブではありません。

まず、ニュージーランド代表としてプレーするための資格を満たしていること。そのうえで、その時点で代表にふさわしいと判断された選手たちが選考され、オールブラックスの代表メンバーに選ばれます。

ここでいう代表メンバーとは、その時期の試合や遠征などに向けて選ばれた選手のグループです。

代表資格と選考について

代表資格があることと、実際にオールブラックスへ選ばれることは別です。

そして面白いのが、選手たちがオールブラックスになるまでに歩いてきた道です。

ある選手をオールブラックスだけで見れば、「ニュージーランド代表の○○選手」です。

ところが、その選手を一段ずつたどっていくと、スーパーラグビーのチームがあり、地域があり、さらに学校やクラブラグビーなど、それぞれのラグビーとの出会いや成長の場所があります。

もちろん、すべての選手がまったく同じ一本道を通るわけではありません。

それでも、オールブラックスの選手を一人たどるだけで、NZラグビーのさまざまな層が見えてきます。

5. スーパーラグビーとはどうつながる?

オールブラックスを理解するうえで、スーパーラグビー・パシフィックは非常に重要です。

ニュージーランドには、

  • ブルーズ
  • チーフス
  • ハリケーンズ
  • クルセイダーズ
  • ハイランダーズ

という5つのスーパーラグビーチームがあります。

多くのオールブラックス選手が、普段はこれらのチームでプレーしています。

そのため、例えば、オールブラックスで気になる選手を見つけたら、その選手がどのスーパーラグビーチームに所属しているのかを調べてみる。

それだけで、オールブラックスの試合がない時期にも、その選手を追い続けることができます。

さらに地域までたどれば、NPC(National Provincial Championship:ニュージーランドの主要な地域代表大会)などの州代表ラグビーにも世界が広がります。

オールブラックス → スーパーラグビー → 地域

上から下へたどっていくと、別々の大会に見えていたNZラグビーが少しずつ一つにつながってきます。

6. オールブラックスはいつ、誰と戦う?

オールブラックスは、世界各国の代表チームとテストマッチを戦います。

対戦相手には、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンといった南半球の国々だけでなく、イングランド、アイルランド、フランス、スコットランド、ウェールズなど北半球の強豪国もいます。

さらに、4年に一度のラグビーワールドカップがあります。

そして、対戦によっては単なる一試合以上の意味を持ちます。

代表的なのが、オーストラリアとの間で争われるブレディスローカップ(Bledisloe Cup)です。

ブレディスローカップは、ニュージーランドとオーストラリアの代表戦で争われる、長い歴史を持つトロフィーです。

また、南アフリカとの対戦にも、100年以上にわたって積み重ねられてきた特別な歴史があります。

つまり、オールブラックスを見る楽しみ方の一つは、

「今日の相手は誰か?」

だけではなく、

「なぜこの対戦が特別なのか?」

まで知ることです。

同じテストマッチでも、対戦相手によって見えてくる物語は変わります。

CHAPTER 3|黒いジャージーの向こう側

7. 黒いジャージーとシルバーファーン

オールブラックスを象徴するものの一つが、黒いジャージーです。

胸にはニュージーランドを象徴するシルバーファーン。

世界中のラグビーファンにとって、この組み合わせを見ただけでオールブラックスを連想できるほど強い存在感があります。

しかし、選手にとって黒いジャージーは単なるユニフォームではありません。

それ以前に同じジャージーを着てきた選手たちの歴史があり、次の世代へ受け渡していくものでもあります。

オールブラックスを知っていくと、よく「レガシー(Legacy)」という考え方に出会います。

レガシーとは、過去から受け継いできたものを未来へ残していく、「受け継がれるもの」「遺産」といった意味です。

自分たちだけのチームではない。

前の世代から受け取り、自分たちが何かを加え、次の世代へ渡していく。

黒いジャージーを見るとき、その背後にある時間まで想像してみると、オールブラックスの見え方は少し変わってきます。

8. ハカは何を意味する?

オールブラックスの試合を初めて見た人にとって、最も印象に残るものの一つがハカかもしれません。

試合開始前、選手たちが一つになって行うハカ。

海外では時に「相手を威嚇するパフォーマンス」のように紹介されることもあるかもしれません。

しかし、それだけで理解すると、ハカが持つ意味の大部分を見落としてしまいます。

ハカはマオリ(Māori)文化に根ざしています。

オールブラックスが行う代表的なハカにはKa Mate(カ・マテ)があり、さらにオールブラックスのためにつくられたKapa O Pango(カパ・オ・パンゴ)があります。

そこには、自分たちが何者であるかという意識、受け継いできた文化や歴史、マナ(mana)、そして自分たち自身を表現する意味があります。

ここでいうマナは、マオリ文化における威信、権威、精神的な力や存在感などを含む概念です。

なぜオールブラックスはハカをするのか。

Ka MateとKapa O Pangoは何が違うのか。

ハカを率いる選手はどう決まるのか。

ここをさらにたどっていくだけでも、ラグビーからマオリ文化へと新しい扉が開いていきます。

9. オールブラックスとニュージーランド社会

オールブラックスの面白さを理解するためには、スタジアムの中だけを見る必要はありません。

  • テストマッチの日。
  • 家族や友人とテレビを見る。
  • 街のパブで試合を見る。
  • 子どもたちが好きな選手の名前を話す。
  • オールブラックスの選手を憧れの存在として見る。

もちろん、ニュージーランドに暮らすすべての人がラグビーを好きなわけではありません。

それでも、オールブラックスが長い時間をかけてニュージーランド社会の中で特別な存在になってきたことは、NZラグビーを理解するうえで重要です。

そして、ここから見えてくるのが、

ラグビーは、スタジアムの中だけにあるわけではない

ということです。

  • オールブラックスから地域へ。
  • 地域からクラブへ。
  • クラブから家族や地域コミュニティへ。

オールブラックスを入口にすると、その先にはニュージーランドの日常があります。

CHAPTER 4|オールブラックスをもっと面白く見る

10. 好きな選手から見る

オールブラックスを楽しむのに、最初からチームの歴史を全部覚える必要はありません。

まず一人、気になる選手を見つける。

それだけでも十分です。

たとえば、その選手について、

  • どのスーパーラグビーチームでプレーしている?
  • どの地域とつながっている?
  • どんな学校やクラブで育った?
  • どんなポジションで、どんなプレースタイル?

と一つずつたどってみる。

すると、一人のオールブラックス選手からNZラグビーの地図が広がっていきます。

  • 選手からチームへ。
  • チームから地域へ。
  • 地域からコミュニティへ。

これはオールブラックスを深く知る、とてもシンプルな方法です。

11. ポジションから見る

自分がラグビーをプレーしているなら、ポジションから見るのも面白いでしょう。

  • プロップならスクラム
  • フッカーならラインアウトやスローイング
  • ロックなら空中戦
  • ルースフォワードならブレイクダウン(タックル後などのボール争奪局面)
  • ハーフバック(日本でいうスクラムハーフ)なら攻撃のテンポ
  • ファースト・ファイブ(日本でいうスタンドオフに近いポジション)なら試合運び
  • ミッドフィールド(主にセンター)なら攻撃と守備の接点
  • アウトサイドバック(主にウイングやフルバック)ならスペースでの勝負

同じオールブラックスでも、ポジションによって試合の見え方はまったく違います。

  • 自分と同じポジションの選手を見る
  • 好きなプレースタイルの選手を見る
  • 歴代の同じポジションの選手と比べてみる

すると、一試合の中で今まで見えていなかった部分が見えるようになります。

12. ライバルから見る

オールブラックスの歴史は、ライバルとの歴史でもあります。

  • オーストラリア
  • 南アフリカ
  • イングランド
  • フランス
  • アイルランド
  • そのほか世界各国の代表チーム

特にオーストラリアとのブレディスローカップや、南アフリカとの長いライバル関係には、何世代にもわたる物語があります。

ここで重要なのは「どの国が最大のライバルか」を一つに決めることではありません。

対戦相手によって、オールブラックスの違う顔が見えることです。

  • ある国との試合では伝統が中心になる。
  • ある国との試合では最近の因縁が生まれる。

ラグビーワールドカップでは、過去の一試合が何年後の対戦にも影響することがあります。

気になる対戦カードからオールブラックスを知る。

これも一つの入口です。

13. 時代から見る

オールブラックスには100年以上の歴史があります。

だからといって、すべてを最初から学ぶ必要はありません。

  • 自分がラグビーを見始めた時代から入ってもいい。
  • 1987年のラグビーワールドカップから見る人もいるでしょう。
  • 1990年代の選手から興味を持つ人もいるでしょう。
  • 2011年のニュージーランド開催大会。
  • 2015年の連覇。
  • あるいは現在のオールブラックス。

一つの時代を知ると、

  • その前はどうだったのか?
  • その後、何が変わったのか?

という次の疑問が生まれます。

歴代選手、キャプテン、コーチ、戦術、ライバル、ワールドカップ。

オールブラックスの歴史には、いくつもの入口があります。

CHAPTER 5|オールブラックスからNZラグビーをもっと知る

14. オールブラックスからスーパーラグビーへ

オールブラックスを見て気になる選手を見つけたら、その選手のスーパーラグビーチームを見てみましょう。

代表では同じ黒いジャージーを着ていた選手たちが、スーパーラグビーでは違うチームに分かれて戦います。

  • オールブラックスでは仲間
  • スーパーラグビーではライバル

この関係を知るだけでも、スーパーラグビー・パシフィックの見え方が変わります。

さらにチームにはそれぞれ異なる地域、歴史、選手、ライバル関係があります。

オールブラックスからスーパーラグビーへ進むことで、「ニュージーランド代表」だった世界が、一気に5つの違う世界へ広がります。

15. オールブラックスから地域へ

さらに一段深くたどると、地域があります。

NZラグビーには、各地域のラグビーを支える地域ラグビー協会(Provincial Union)があります。

たとえば、

  • Auckland
  • Waikato
  • Wellington
  • Canterbury
  • Otago

などがあり、このほかにもニュージーランド各地に地域ラグビー協会があります。

  • オールブラックスの選手プロフィールを見て、どの地域とつながっているのかを調べる。
  • そこからNPCや州代表ラグビーを見る。
  • さらにクラブや学校までたどってみる。

すると、

「オールブラックスの○○選手」

だった存在が、

「この地域から育ってきた一人のラグビー選手」

として見えるようになります。

オールブラックスという代表チームの向こう側には、それぞれの選手が育ってきた地域があります。

16. オールブラックスの向こう側へ

オールブラックスは、ニュージーランドラグビーを知る最高の入口の一つです。

でも、オールブラックスだけがニュージーランドラグビーではありません。

  • 好きな選手を見つける。
  • 所属するスーパーラグビーチームを見る。
  • 地域を知る。
  • クラブや学校までたどる。
  • ハカからマオリ文化に興味を持つ。
  • ライバルとの一試合から100年以上の歴史を知る。

そうやって一つずつ深く知っていくと、最初は「オールブラックス」という一つのチームだったものが、

選手 → チーム → 地域 → コミュニティ → 文化

へと広がっていきます。

そして、その先に見えてくるのは、試合や選手だけではありません。

  • ラグビーをする子どもたち。
  • 週末のクラブラグビー。
  • 地域を代表するチーム。
  • 家族や仲間と試合を見る時間。
  • マオリやパシフィカをはじめとするさまざまな文化。
  • ニュージーランドでラグビーがある日常。

オールブラックスを知ること。
そこから、ニュージーランドラグビーをもっと知る旅が始まります。

オールブラックスからさらに世界を広げてみたくなったら、次はニュージーランドラグビー全体を見渡してみましょう。