日本とニュージーランドのラグビー交流というと、代表戦やLeague Oneでの選手移籍がまず思い浮かぶかもしれません。
しかし育成の視点で見ると、両国の接点はもっと広く、代表、育成年代、学校、女子、Sevens、クラブ、コーチなど、さまざまな場所に存在しています。
その一つ一つをたどると、日本とNZの選手育成が「一本の公式ルート」ではなく、いくつもの接点によってつながっていることが見えてくるでしょう。
目次
CHAPTER 1|日本とNZは育成でどうつながっている?
2. 2023年のNZR × JRFU MoUがつくった土台
CHAPTER 2|代表・育成年代でつながる
4. All Blacks XVの日本遠征にも育成の意味があった
CHAPTER 3|学校・若手選手が直接つながる
9. SANIX World Rugby Youthという接点
10. 海外遠征は試合だけではない
CHAPTER 4|女子・Sevensにも広がる育成交流
12. U18女子がNZへ遠征している
CHAPTER 5|Japan × NZ Developmentのこれから
最後まで読めば、日本とNZの選手育成が、どこで、どのようにつながっているのかを、より立体的に捉えやすくなるでしょう。
CHAPTER 1|日本とNZは育成でどうつながっている?
1. 一つの公式な育成ルートがあるわけではない
日本とニュージーランドの選手育成には、「このルートを進めば日本からNZのトップレベルへ行ける」という一つの公式な道があるわけではありません。
実際には、
- 代表・育成選抜
- U18・U20
- 学校
- クラブ
- 女子ラグビー
- Sevens
- コーチ
- 国際大会
- 個人の留学や競技参加
など、さまざまな場所で両国のラグビーが接しています。
だからJapan × NZの育成を理解するときは、一本の道を見るより、どこに、どんな接点があるのかを地図のように見る方が実態に近いでしょう。
そして、その接点は協会同士の公式な関係だけで生まれているわけではありません。
学校、クラブ、大会、コーチ、そして選手自身の移動によって生まれるものもあります。
2. 2023年のNZR × JRFU MoUがつくった土台
両国の関係を考えるうえで重要なのが、2023年5月にNZ Rugbyと日本ラグビーフットボール協会が締結したMoUです。
このMoUでは、例えば、
- All Blacks、All Blacks XV、Māori All Blacksと日本側代表の試合
- NZのSuper RugbyチームとLeague Oneクラブの交流機会
- NZと日本のSevens代表の交流機会
- 日本のトップ女子選手がSuper Rugby AupikiやFarah Palmer Cupでプレーする機会についての協議
などが示されました。
これは、日本とNZを結ぶ一つの「若手育成制度」が作られたという意味ではありません。
一方で、代表、プロクラブ、女子、Sevensなど、両国のラグビー環境が接する場所を広げていくための重要な土台と見ることができます。
実際、2024年のMāori All Blacks日本遠征も、NZ RugbyはこのMoU締結後に決まった試合として説明しています。
3. 育成交流は代表戦だけではない
日本とNZのラグビー交流をAll Blacksと日本代表の試合だけで考えると、全体の一部しか見えません。
育成という視点まで広げると、
- 若い選手が国際試合を経験する
- 高校チーム同士が同じ大会で戦う
- 女子選手がNZへ遠征する
- Sevensの若手選手が国際大会へ参加する
- 選手が相手国の競技環境へ入る可能性を探る
- クラブやコーチが国境を越えてつながる
といった形もあります。
つまりJapan × NZの育成交流は、代表協会同士の一つのプロジェクトだけではありません。
異なる年代、カテゴリー、組織で生まれている接点の集合として見ることができます。
CHAPTER 2|代表・育成年代でつながる
4. All Blacks XVの日本遠征にも育成の意味があった
All Blacks XVはAll Blacksとは別のチームですが、NZ RugbyにとってAll Blacksにつながる重要な育成・強化の場でもあります。
2023年、All Blacks XVは日本へ遠征し、Japan XVと日本代表との2試合を行いました。
NZ Rugbyはこの遠征について、より広い選手層へ国際経験を与え、異なるプレースタイルや生活環境に触れることが選手の成長につながるという考えを示しています。
つまり日本との試合には、勝敗だけでなく、NZ側の選手にとって、
- 国際試合を経験する
- 異なるプレースタイルと対戦する
- 普段とは違う環境で過ごす
- 次のレベルへ向けて経験を積む
という意味もありました。
日本側にとっても、NZの高い競技レベルの選手と実際に戦う機会になります。
代表交流そのものが、選手に新しい経験を与える場にもなっているのです。
5. NZではU18から国際経験を育成に取り入れる
NZ Rugbyは2026年、高校年代・U18の育成プログラムを強化しました。
この環境には、
- NZ Schools
- NZ Barbarians U18
- Māori U18 Whatukura
- Australia Schools
- Australia U18
- Fiji U18
- Tonga U18
- Samoa U18
の8チームが参加します。
NZ Rugbyは、NZの3チームを通して75人以上の選手に高い競技レベルの育成環境を経験させることを示しています。
重要なのは、若い選手を国内だけで育てるのではなく、国際試合も育成環境の一部として使っていることです。
選手はそこで、
- 高いレベルの相手に挑戦する
- サポートを受けながら成長する
- 次へ進むために必要なことを理解する
- 異なる国の選手との試合を経験する
機会を得ます。
なお、2026年のこのプログラムに日本のU18チームは参加していません。
ここで注目したいのは、日本との直接的な制度ではなく、NZが若い年代から国際経験を育成の中に取り入れていることです。
6. U20では実戦が育成と評価の場になる
NZ U20でも、実際にプレーすることが育成の重要な一部になっています。
2026年3月のNZ U20育成プログラムには、選抜された100人が参加しました。
選手たちは、
- Barbarians
- Centurions
- Saracens
- Harlequins
の4チームに分かれ、実戦を含むプログラムを経験しました。
NZ Rugbyは、この環境で国際プログラムに必要な基準やスキル、試合理解を共有し、実戦の中で選手を見ることを重視しています。
さらに、このプログラムはThe Rugby Championship U20へ向けた選手選考の重要な機会でもありました。
つまりここでは、
プレーすることそのものが、育成であり、評価の機会でもある。
そうした仕組みを見ることができます。
7. 日本の育成選抜もNZで実戦を経験してきた
Japan → NZという方向にも、育成と実戦が直接つながった事例があります。
2018年、日本のNational Development Squad(NDS)がNZ遠征を行いました。
JRFUはNDSについて、将来日本代表に選ばれる可能性のある選手などを集め、日本代表へのスムーズな合流を目指す取り組みとして位置づけていました。
そして、このNZ遠征は2019 Rugby World Cupへ向けた選考の場の一つでもありました。
遠征ではJAPAN AとしてNZのチームと実戦を経験し、最終戦ではHurricanes Developmentと対戦しています。
これは、日本側の代表候補選手がNZへ行き、現地の育成・強化チームとの試合を通じて経験と選考の機会を得た具体的な事例です。
現在も同じ形の仕組みが継続しているという意味ではありません。
それでも、日本とNZの間で「育成」と「実戦」が直接交わってきたことを示す一つの例です。
CHAPTER 3|学校・若手選手が直接つながる
8. 日本とNZの高校が同じ大会でプレーする
Japan × NZの育成交流は、代表レベルだけではありません。
学校年代では、日本とNZの高校チームが同じ大会で実際にプレーする機会があります。
代表的なのが、福岡県で開催されるSANIX World Rugby Youth Tournamentです。
この大会には日本だけでなく海外からも高校年代のチームが参加し、同じ大会の中で競い合います。
つまり選手は、代表チームに選ばれなくても、学校ラグビーを通してJapan × NZの国際交流を経験できる場合があります。
9. SANIX World Rugby Youthという接点
2024年にはNZから、
- 男子15人制|Southland Boys High School
- 女子Sevens|Manukura School
が参加しました。
2025年には、
- 男子15人制|Hamilton Boys High School
- 女子Sevens|Howick College
が参加しています。
ここで重要なのは、日本とNZの学校年代の選手が、実際に同じ大会環境へ入っていることです。
同じ年代の海外選手が、
- どのようにプレーするのか
- どんな判断をするのか
- どのように試合へ臨むのか
を、グラウンドの中で直接体験できます。
映像を見るだけでは得られない接点です。
10. 海外遠征は試合だけではない
SANIXのような国際大会の価値は、試合だけではありません。
JRFUは2025年大会について、国際的な文化交流も大会の重要な要素として紹介しています。
男子チームは同じ施設で滞在し、
- 食事
- 交流活動
- 選手同士のコミュニケーション
などを通して、グラウンドの外でも接する機会があります。
ラグビーの試合をするだけなら、交流は80分で終わります。
しかし同じ場所で過ごし、食事をし、話をすることで、相手は「海外のラグビーチーム」から、一人ひとりの選手へと変わっていきます。
ラグビーが、人と人がつながる入口になる。
Japan × NZの育成交流には、競技力だけでは測れない価値もあります。
11. 若い年代で異なるラグビー文化に触れる
日本とNZでは、ラグビーを取り巻く環境も同じではありません。
例えば、
- 学校とラグビーの関係
- 地域クラブとの関わり
- 選手とコーチの関係
- チーム文化
- ラグビーが地域で占める位置
など、それぞれに違いがあります。
だからこそ、若い年代で相手のラグビー文化に触れることには意味があります。
重要なのは、「NZのやり方を日本へそのまま持ち帰ればよい」ということではありません。
自分たちとは違うラグビーの考え方や環境があると知ること。
それによって、自分たちのラグビーを改めて考えるきっかけにもなるでしょう。
CHAPTER 4|女子・Sevensにも広がる育成交流
12. U18女子がNZへ遠征している
Japan × NZの育成交流は、男子15人制だけではありません。
日本のU18女子Sevens Development Squadは、2024年と2025年にNZへ遠征し、Aucklandで開催されたGlobal Youth Sevensへ参加しています。
2024年大会では、日本は準決勝でNew Zealandを28–19で破り、決勝ではAustraliaを26–15で破って優勝しました。
重要なのは結果だけではありません。
若い女子選手がNZへ行き、
- 海外で準備する
- 国際大会でプレーする
- 異なる国のチームと対戦する
- 普段とは違う環境でチームとして過ごす
経験を得ています。
これはJapan × NZの育成交流を示す、非常に具体的な接点です。
13. Sevensでも国際経験を積む機会がある
2025年にも、日本のU18女子Sevens Development SquadはAucklandへ遠征し、Global Youth Sevensへ参加しました。
大会後、JRFUのコーチは、選手たちがプレーだけでなく、試合に向けた準備や選手同士の確認、チームのために行動することなどでも成長したと振り返っています。
つまり、国際遠征で得るものは試合経験だけではありません。
海外という普段とは違う環境の中で、自分たちで考え、準備し、チームとして行動する経験も育成の一部になります。
Sevensもまた、日本とNZの若い選手を国際的なラグビー環境へつなぐ入口の一つです。
14. 日本女子選手がNZ国内大会でプレーする機会も検討
Japan × NZの接点には、短期間の遠征や国際大会とは違う形も考えられています。
2023年のNZR × JRFU MoUでは、日本のトップ女子選手がNZの、
- Super Rugby Aupiki
- Farah Palmer Cup
でプレーする機会について協議することが明記されました。
ここで注意したいのは、MoUによって日本の選手が自動的にNZでプレーできるようになったわけではないことです。
また、若手選手だけを対象とした育成制度でもありません。
それでも、両国の関係が「日本対NZの試合を増やす」だけではなく、選手が相手国の競技環境そのものへ入る可能性まで視野に入れている点は重要です。
15. 育成交流は男子15人制だけではない
Japan × NZの選手育成という言葉から、男子高校生やU20だけを想像すると、全体像の一部しか見えません。
実際の接点には、
- 男子15人制
- 女子15人制
- Sevens
- 学校
- 代表・育成選抜
- 海外遠征
- 相手国の競技環境への参加
など、さまざまな形があります。
選手によって必要な環境も、目指す場所も同じではありません。
だからこそ、育成の接点が一つではなく複数存在することに意味があります。
CHAPTER 5|Japan × NZ Developmentのこれから
16. 協会だけでなく学校・クラブ・コーチもつながる
Japan × NZの選手育成を考えるとき、NZ RugbyとJRFUだけを見ていては全体像を捉えきれません。
育成に関わる接点を広く見れば、
- ラグビー協会
- 代表・育成選抜
- 学校
- 地域クラブ
- プロクラブ
- コーチ
- 大会運営者
- 選手
- 家族
- 地域コミュニティ
など、さまざまな人や組織が関わります。
協会同士の関係が大きな土台になり、その周囲で学校、クラブ、コーチ、人と人の関係が生まれていく。
そう考えると、Japan × NZの育成交流はより立体的に見えてきます。
17. 一本のルートではなく「複数の接点」
日本とNZの育成交流を、
Japan → NZ
という一本の矢印だけで描くと、実際の姿を単純化しすぎてしまいます。
これまで見てきたように、実際には、
- All Blacks XV ↔ 日本
- 日本の育成選抜 → NZの育成・強化チーム
- 学校 ↔ 学校
- U18女子 → NZの国際Sevens大会
- 日本女子選手 → NZ国内大会への参加機会の検討
- Super Rugbyクラブ ↔ League Oneクラブ
- コーチ ↔ 異なる国のラグビー環境
といった複数の接点があります。
すべてが同じ制度の中にあるわけではありません。
すべてが現在も同じ形で続いているわけでもありません。
しかし、一つ一つを並べると、日本とNZのラグビーが育成という面でもさまざまな場所で接していることが分かります。
一本の大きな橋ではなく、いくつもの小さな橋が両国の育成環境をつないでいる。
そう考えると、Japan × NZ Developmentの全体像を捉えやすくなります。
18. 若い選手に新しい世界への扉を増やす
選手育成というと、「どうすればトップ選手をつくれるか」という話になりがちです。
もちろん、それも重要です。
しかし国際交流には、もう少し広い意味があります。
若い選手が、
- 違うラグビーを見る
- 違う相手とプレーする
- 違う人と出会う
- 違う文化を知る
- 自分の現在地を考える
- 新しい目標を見つける
きっかけにもなります。
その経験からプロを目指す選手もいれば、コーチになる人もいるかもしれません。
海外へ挑戦する人もいれば、日本でプレーを続ける人もいるでしょう。
大切なのは、全員を同じ道へ進ませることではありません。
若い選手が選べる「次の扉」を増やすこと。
Japan × NZの育成交流を深める意味は、そこにもあるのではないでしょうか。
日本とニュージーランドの選手育成は、一つの完成されたシステムでつながっているわけではありません。
だからこそ、代表、育成選抜、学校、女子、Sevens、クラブ、コーチ、そして人と人の交流という一つ一つの接点が重要です。
その小さな橋が増えていくことで、両国の若い選手にとって見える世界も、少しずつ広がっていくはずです。
知れば知るほど、もっと面白い。
ニュージーランドラグビー。
