ニュージーランドの子どもたちは、最初から大人と同じラグビーをプレーするわけではありません。
小さなフィールド、少ない人数、シンプルなルールから始まり、成長に合わせて少しずつタックルやセットプレーなどを学んでいきます。
ニュージーランドのジュニアラグビーは、「大人のラグビーを小さくしたもの」ではなく、子どもの成長に合わせてラグビーを学び、楽しめるように設計された世界です。
最後まで読めば、ニュージーランドでラグビーをプレーする子どもたちのためにうまく設計されていることがきっとわかるでしょう。
CHAPTER 1|ニュージーランドのジュニアラグビーを知る
ジュニアラグビーとは?
ニュージーランドでは、多くの子どもたちが地域のクラブなどを通じてラグビーの世界に入っていきます。
その中心にあるのが、ニュージーランドラグビー(NZR)が整備しているJunior Rugby(ジュニアラグビー)の仕組みです。
現在NZRは、Years 1–8(概ね5歳から13歳未満)を公式のジュニアラグビーの基本的な対象として案内しています。
特徴的なのは、子どもを最初から大人のゲームに合わせるのではなく、ゲームの方を子どもの発達段階に合わせて変えていくことです。
フィールドの広さ、1チームの人数、ルール、コンタクト、スクラムやラインアウトなどを段階的に変えることで、子どもたちがボールに触れ、走り、パスし、自分で判断する機会を増やしていきます。
KEY POINT
NZのジュニアラグビーを見るときに大切なのは、「何歳から大人と同じラグビーになるのか」だけではありません。成長に合わせてゲームそのものが変化していくところに特徴があります。
CHAPTER 2|Small Blacksを知る
Small Blacksとは?
NZのジュニアラグビーを知るうえで重要なのが、Small Blacks(スモール・ブラックス)です。
子どもたちが安全に、そして楽しみながらラグビーの基本的な動きやスキルを身につけていくための仕組みで、年代や発達段階に応じてゲームの形が変わっていきます。
最初の段階では、楽しむことや基本的な動き、ボールを扱うことなどが中心です。
そこから成長に合わせて、走る、パスする、タックルを安全に学ぶ、ボールを争う、スクラムやラインアウトを学ぶといったように、ラグビーの要素が少しずつ加わっていきます。
ポジションについても、早い段階から一つの役割に固定するのではなく、成長しながらさまざまな役割を経験し、より専門的なスキルへ進んでいく考え方が取られています。
なぜ少ない人数、小さなフィールドでプレーする?
近年のNZRのジュニアラグビー改革で重要なのが、少人数のゲームをより長く続ける考え方です。
人数を少なくすることで、一人ひとりがボールに触れ、走る、パスする、タックルする、自分で判断するといった場面に関わる機会を増やせます。
2026年にはYear 5(U10)のSmall Blacks Development Modelも変更され、前年までの段階からより自然につながる形で、少人数のゲームを継続する方向へ見直されました。
スクラムやラインアウトなどのセットプレーについても、より後の年代で段階的に学んでいく方向へ変更されています。
ここから見えてくるのは、「早く大人と同じラグビーをさせること」が、必ずしも子どもの育成のゴールではないという考え方です。
楽しさ、安全性、参加する機会、スキルの習得などを重視しながら、NZRはジュニアラグビーのゲーム設計そのものを継続的に見直しています。
CHAPTER 3|安全にラグビーを学ぶ
コンタクトも段階的に学ぶ
ラグビーを始める子どもを持つ保護者にとって、気になることの一つがタックルなどのコンタクトです。
NZのジュニアラグビーでは、コンタクトもいきなり完成形で導入するのではありません。
ノンコンタクトのゲームから始まり、成長に合わせてタックル、ラック、モール、セットプレーなどを段階的に学んでいきます。
ラグビーへの入口も一つではありません。
NZRには、タックルの代わりに腰につけたタグを取るRipRugby(リップラグビー)など、ノンコンタクトでラグビーを経験できる形式もあります。
つまり、「ラグビーを始める=すぐに激しいコンタクトをする」というわけではありません。
CHAPTER 4|地域のクラブから広がる世界
クラブとジュニアラグビー
NZのジュニアラグビーを理解するとき、地域のラグビークラブは重要な存在です。
NZRによると、ジュニアラグビーのシーズンは基本的に4月から9月。多くのチームでは週1回程度練習し、土曜日の朝に試合を行います。
ここには、ニュージーランドのクラブラグビーがトップ選手だけの世界ではないことも表れています。
地域のラグビークラブには、シニア選手だけでなく、子どもたちやその家族も集まります。
子どもがラグビーを始める。保護者がチームを手伝う。コーチやレフェリー、ボランティアが支える。そして週末に地域の人たちが集まる。
ジュニアラグビーは、子どもがラグビーを学ぶ場所であると同時に、家族がNZの地域ラグビー文化に入っていく入口でもあります。
CHAPTER 5|ジュニアから、その先へ
子どもが成長すると、ラグビーの世界も広がる
子どもたちが成長すると、ラグビーの世界も広がっていきます。
学校でプレーする選手もいれば、地域のクラブで続ける選手もいます。
さらにその先には、高校・ティーンラグビー、地域ラグビー協会の育成環境、年代別代表、州代表ラグビー、スーパーラグビーなど、さまざまな世界があります。
ただし、Junior → School → Provincial Union → Super Rugby → All Blacksという一本の道が決められているわけではありません。
NZラグビーには、学校、クラブ、地域、育成プログラムなど複数の環境があり、それらがつながりながら選手を育てています。
この「NZでは選手がどのような環境で育っていくのか」という全体像は、次の記事で詳しく見ていきます。
ジュニアラグビーから見えてくるNZラグビー
オールブラックスのようなトップレベルだけを見ていると、NZラグビーは「強い選手を生み出す国」に見えるかもしれません。
しかし、そのずっと手前には、子どもがボールを持って走り、仲間とプレーし、少しずつ新しいことを覚え、そして「また来週もラグビーをしたい」と思える環境があります。
現在のNZのジュニアラグビーから見えてくるのは、子どもを大人のゲームへ急いで近づけるのではなく、ゲームを子どもの成長に合わせていくという考え方です。
ニュージーランドラグビーの強さを知るなら、オールブラックスから下を見るだけではなく、子どもたちが最初にラグビーボールに触れる場所から上を見てみる。
そこから見えるNZラグビーも、とても面白い世界です。
