Moascar Cupとは?NZスクールラグビーで100年以上続くトロフィーの歴史と意味

Moascar Cupは、NZのスクールラグビーにある少し変わったトロフィーです。

全国大会を開いて、その年の優勝校を決めるものではありません。Moascar Cupが懸かった試合で現在の保持校を破ると、勝った学校がその場で新しい保持校になります。

そして獲得した学校は、今度は挑戦を受ける側になります。

現行ルールではNZ国内の男子1st XVが対象です。この記事では、100年以上受け継がれてきたMoascar Cupがどんな仕組みで動いているのか、その歴史と2026年の具体例を通して解説します。

この記事を最後まで読むと、Moascar Cupがなぜ普通の大会とは違うのか、そしてNZの1st XV文化の中でどのように受け継がれているのかが見えてきます。

CHAPTER 1|Moascar Cupとは?

1. 全国大会ではなくチャレンジトロフィー

Moascar Cupを理解するとき、最初に押さえたいのが、全国大会の優勝杯ではないということです。

例えばTop Fourでは、地域を勝ち上がった1st XVが全国大会に集まり、全国王者を決めます。

Moascar Cupは、それとは違う仕組みです。

その時点でトロフィーを持っている保持校があり、Moascar Cupが懸かったチャレンジマッチで別の学校が保持校に挑みます。

挑戦校が勝てば、トロフィーはその学校へ移ります。

Moascar Cupは、一度の大会で優勝校を決めるのではなく、試合の結果によって学校から学校へ移っていくチャレンジトロフィーです。

そのため、一つのシーズンの途中でも保持校が変わることがあります。

ただし、保持校が戦うすべての試合に自動的にMoascar Cupが懸かるわけではありません。現行ルールに基づいて、チャレンジ対象となる試合が決められています。

2. 保持校を倒せばトロフィーが移る

Moascar Cupを持っている学校が保持校、その保持校に挑む学校が挑戦校です。

チャレンジマッチの結果は、次のようになります。

  • 挑戦校が勝つ → Moascar Cupを獲得
  • 保持校が勝つ → 保持校が防衛
  • 引き分け → 保持校が防衛

つまり挑戦校がトロフィーを獲得するには、チャレンジマッチで保持校に勝つ必要があります。

そして勝った瞬間から、その学校自身が新しい保持校になります。

奪った瞬間から、次は自分たちが守る側になる。

この入れ替わりが、Moascar Cupの大きな特徴です。

3. 引き分けでは奪えない

Moascar Cupでは、試合が引き分けても挑戦校にトロフィーは移りません。

その場合は、保持校がそのまま防衛します。

また、トロフィーの行方を決めるために延長戦を行う仕組みでもありません。

そのため挑戦校に必要なのは、保持校に勝つことです。

通常のリーグ戦では引き分けにも意味がありますが、Moascar Cupを持ち帰るためには勝利が必要です。

CHAPTER 2|どうやって防衛する?

4. 保持校は何度も挑戦を受ける

Moascar Cupは、獲得して終わりのトロフィーではありません。

年初からMoascar Cupを保持している学校は、現行ルール上、4月1日までに最低7試合のチャレンジマッチを設定・申告する必要があります。

原則として保持校のホームゲームがチャレンジ対象になり、少なくとも1試合は、自校が所属する地域ラグビー協会の外にある学校との対戦も設定します。

一方で、

  • プレシーズンマッチ
  • 海外チームとの試合

はMoascar Cupのチャレンジ対象にはなりません。

つまりMoascar Cupを持つことは、

名誉だけでなく、防衛し続ける責任を持つことでもあります。

シーズン途中に別の学校がMoascar Cupを獲得すると、その学校が新しい保持校となり、今度は残りのシーズンで挑戦を受ける側になります。

5. 地域大会の決勝にも懸かる

Moascar Cup専用の大会を別に開催するわけではありません。

普段行われている1st XVの大会の中で、Moascar Cupが同時に懸かることがあります。

現行ルールでは、保持校が地域大会や地域間大会の決勝に出場する場合、会場にかかわらずその試合はMoascar Cupのチャレンジマッチになります。

そのため、一つの試合に、

  • 地域大会のタイトル
  • Moascar Cup

の両方が懸かることがあります。

地域大会の大一番に、トロフィーの防衛というもう一つの物語が加わるわけです。

6. Top Fourへの道でもMoascar Cupが動く

Moascar CupとTop Fourは別の仕組みです。

しかし、実際の試合では二つが重なることがあります。

Moascar Cup保持校がTop Fourへの出場権を決めるプレーオフに出場する場合、その試合にもトロフィーが懸かります。

さらに、保持校自身がTop Fourに進んだ場合は、保持校がTop Fourで戦う試合もMoascar Cupのチャレンジ対象になります。

Top FourとMoascar Cupは別のタイトルですが、同じ試合に両方が懸かることがあります。

2026年には、実際にこの二つがTop Four決勝で重なりました。

CHAPTER 3|100年以上続くトロフィーの歴史

7. 第一次世界大戦後のエジプトで誕生

Moascar Cupの歴史は、NZの学校から始まったわけではありません。

その起源は、第一次世界大戦の終わりまで遡ります。

戦争が終わったあと、英国、ニュージーランド、オーストラリアなどの兵士たちは、帰国する船を待つ間、エジプトのイスマイリアにあるMoascarに滞在していました。

そこで兵士たちはラグビーの大会を開催しました。

その大会のためにつくられたのが、Moascar Cupです。

現在NZのスクールラグビーで争われているトロフィーには、100年以上前の兵士たちのラグビーまでつながる歴史があります。

8. 木製プロペラが使われた台座

Moascar Cupは、その姿にも特徴があります。

トロフィーは、撃墜されたドイツ軍機の木製プロペラの一部を使った台座に取り付けられました。

当時の大会では、New Zealand Mounted Rifles Unit and Depotが10試合で1敗という成績で優勝しました。

その後、Moascar Cupはニュージーランドへ持ち帰られ、New Zealand Rugby Unionへ贈られます。

そして、NZの学校ラグビーで争われるトロフィーとして受け継がれていきました。

単なる優勝杯ではなく、トロフィーそのものにも長い歴史が刻まれています。

9. 1920年からNZの学校ラグビーへ

Moascar CupがNZの学校ラグビーで争われるようになったのは、1920年まで遡ります。

つまり、学校ラグビーの世界でも100年以上にわたって受け継がれてきました。

初期には、

  • Christchurch Boys’ High School
  • Auckland Grammar School
  • New Plymouth Boys’ High School

などがMoascar Cupを手にしています。

ただし、1920年当時から現在とまったく同じ方式だったわけではありません。

長い歴史の中で運用方法は変化し、形を変えながら100年以上にわたってNZのスクールラグビーに受け継がれてきたトロフィーです。

その歴史の長さも、Moascar Cupが1st XVラグビーで特別な存在となっている理由の一つです。

CHAPTER 4|2026年を見ると仕組みが分かる

10. Rotorua Boys’からTauranga Boys’へ

Moascar Cupの仕組みは、2026年の動きを見ると分かりやすくなります。

2026年のシーズン開始時、Moascar Cupを保持していたのはRotorua Boys’ High Schoolでした。

Rotorua Boys’はシーズン中に挑戦を受けながらトロフィーを防衛していきます。

しかし8月、Tauranga Boys’ Collegeとのチャレンジマッチで、

Tauranga Boys’ College 31–24 Rotorua Boys’ High School

となりました。

この勝利によって、Moascar CupはRotorua Boys’ High SchoolからTauranga Boys’ Collegeへ移りました。

そしてTauranga Boys’ Collegeは、その瞬間から新しい保持校になります。

11. Top Four決勝でSt Andrew’s Collegeへ

その後、Tauranga Boys’ Collegeは地域予選を勝ち上がり、2026年のTop Fourへ進みました。

Moascar Cup保持校がTop Fourに出場したため、全国大会でTauranga Boys’ Collegeが戦う試合にもトロフィーが懸かりました。

準決勝ではWestlake Boys’ High Schoolに勝利し、Moascar Cupを防衛します。

そして決勝では、St Andrew’s Collegeと対戦しました。

結果は、

St Andrew’s College 34–24 Tauranga Boys’ College

でした。

この一試合でSt Andrew’s Collegeは、

  • National Top Four初優勝
  • Moascar Cup獲得

の両方を達成しました。

2026年だけを見ても、Moascar Cupは、

Rotorua Boys’ High School → Tauranga Boys’ College → St Andrew’s College

と移動しています。

2026年9月8日時点で確認できるNZ Rugbyの最新公式情報では、St Andrew’s CollegeがMoascar Cupを保持しています。

この流れを見ると、チャレンジトロフィーという仕組みがよく分かります。

12. Top Fourとは違う、もう一つの1st XVタイトル

Top FourとMoascar Cupは、どちらもNZの1st XVラグビーで重要な存在ですが、その仕組みは違います。

Top Four Moascar Cup
仕組み 地域予選を勝ち上がり全国大会へ進む 保持校にチャレンジする
獲得条件 全国大会を勝ち抜く チャレンジマッチで保持校を破る
獲得後 全国王者としてタイトルを獲得 新しい保持校となり、防衛する
性格 全国選手権 チャレンジトロフィー

Top Four = 全国王者を決める選手権 / Moascar Cup = 保持校から奪い、守り続けるチャレンジトロフィー

2026年には、この二つがTop Four決勝という一つの試合で重なりました。

St Andrew’s Collegeは全国王者になると同時に、Moascar Cupの新しい保持校にもなりました。

まとめ|奪った瞬間から、次は守る側になる

Moascar Cupは、一度の大会でその年の優勝校を決めるトロフィーではありません。

Moascar Cupが懸かったチャレンジマッチで現在の保持校を破った学校が、新しい保持校になります。

そして今度は、自分たちが挑戦を受ける側になります。

  • 勝てば防衛
  • 負ければトロフィーが移る
  • 引き分けなら保持校が防衛

という仕組みです。

その歴史は第一次世界大戦後のエジプトまで遡り、NZの学校ラグビーでは1920年から、形を変えながら100年以上受け継がれてきました。

2026年には、

Rotorua Boys’ High School → Tauranga Boys’ College → St Andrew’s College

と実際にトロフィーが移りました。

Top Fourが全国王者を決める舞台なら、Moascar Cupは、保持校から奪い、その歴史を自分たちが次の試合へ持っていくトロフィーです。

この独特な仕組みと100年以上の歴史も、NZの1st XVラグビーをより面白くしている文化の一つです。