ニュージーランドの街を歩いていると、住宅地や公園の近くにラグビーグラウンドを見かけることがあります。
そこにあるのは、ただ試合をするためのチームなのでしょうか。
地域のクラブをもう少し近くから見てみると、選手だけではない多くの人と地域の暮らしにつながっているClub Rugbyの姿が見えてきます。
目次
CHAPTER 1|地域の中にあるラグビークラブ
CHAPTER 2|クラブと地域はどうつながる?
CHAPTER 3|地域が違えば、クラブも違う
CHAPTER 4|Club Rugbyから地域を見る
最後まで読めば、ラグビークラブがなぜ地域とつながっているのか、そしてClub Rugbyを見ることでNZの地域の一面まで見えてくる理由を、より理解しやすくなるでしょう。
CHAPTER 1|地域の中にあるラグビークラブ
1. NZには450を超えるラグビークラブがある
ニュージーランドのラグビーと聞くと、オールブラックスやスーパーラグビーを最初に思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、もっと日常に近いところにもラグビーがあります。
それが、各地で活動している地域のラグビークラブです。
New Zealand Rugby(NZR)によると、現在Aotearoa New Zealandには450を超えるラグビークラブがあります。
さらにNZRは、ニュージーランドのほぼすべての地域に、参加できるラグビークラブがあると案内しています。
大きなスタジアムで行われるトップレベルのラグビーとは違い、地域のClub Rugbyは、人々の暮らしにより近い場所にあります。
週末になれば選手がグラウンドへ行き、その周りにはコーチ、家族、サポーター、クラブを支える人たちが集まります。
NZRがラグビークラブを「ゲームにとって重要な存在」と位置づけている背景には、こうした全国各地のクラブの存在があります。
NZラグビーを知る入口は、大きなスタジアムだけではありません。地域のグラウンドにも、もう一つの入口があります。
2. クラブに関わるのは選手だけではない
では、一つのラグビークラブには、どんな人がいるのでしょうか。
グラウンドで最も目立つのは選手ですが、クラブを動かしているのは選手だけではありません。
- コーチ
- マネージャー
- レフェリー
- クラブ運営に関わる人
- グラウンドや施設を支える人
- 家族やサポーター
- さまざまな役割を担うボランティア
NZRによると、ラグビーシーズン中には全国で13,000人のコーチが活動し、グラウンドの外では20,000人を超えるマネージャー、ボランティア、運営関係者がラグビーを支えています。
グラウンド整備、バー、チーム運営、クラブ役員など、その役割もさまざまです。
つまり、一つのクラブに目を向けると、「プレーする人」の外側に、ラグビーに関わるたくさんの人がいることが分かります。
ここが、クラブと地域の関係を理解する最初のポイントです。
CHAPTER 2|クラブと地域はどうつながる?
3. 一人の参加から、関わる人が広がっていく
例えば、一人の子どもが地域のクラブでラグビーを始めたとします。
そこにはコーチが必要です。
試合の日にはチームを運営する人がいて、家族が送り迎えをしたり、サイドラインから応援したりすることもあります。
保護者がチームを手伝い始め、その後コーチやマネージャーとしてクラブに関わることもあるでしょう。
もちろん、すべての人が同じようにクラブへ深く関わるわけではありません。
それでも、一人の選手の周りにさまざまな役割や関係が生まれることで、クラブには選手以外の人も集まってきます。
Sport New Zealandも、チームやグループで行うスポーツへの参加について、人とのつながりや地域とのつながり、帰属意識を育む可能性があると整理しています。
ラグビークラブと地域の関係も、最初から抽象的な「Community」が存在するのではありません。
一人ひとりがプレーする、支える、見る、手伝う。
そんな小さな関わりが重なっていくことで、人とクラブのつながりが生まれていきます。
4. 試合の外にもクラブの時間がある
地域とのつながりが見えるのは、グラウンドの中だけではありません。
NZRが行った「Future of Rugby Clubs」の調査では、クラブでの体験について、フィールド上の活動だけでなく、Social Environment(人と交流する環境)も重要だとされています。
クラブによって形は違いますが、試合の前後に人が話したり、食事をしたり、クラブルームに集まったりする時間があります。
同調査では、サポーター向けの会員制度、ほかのスポーツ、フィットネス活動、食事など、クラブがフィールド外でもさまざまな活動を提供している例が確認されています。
つまりClub Rugbyの一日は、キックオフからノーサイドまでの80分だけではありません。
試合の前後にも人が関わり、そこで会話や新しいつながりが生まれることがあります。
前の記事で紹介したクラブルームも、そのような人のつながりが見えやすい場所の一つです。
CHAPTER 3|地域が違えば、クラブも違う
5. すべてのクラブが同じではない
ここで大切なのは、「NZのラグビークラブはすべてこうだ」と考えないことです。
オークランドのような大都市にあるクラブと、人口の少ない町や農村部にあるクラブでは、置かれている環境が違います。
地域の人口、年齢構成、文化的背景、移動距離、施設、参加できる人の数なども異なります。
NZRと26の地域ラグビー協会が進めた「Future of Rugby Clubs」でも、都市部と農村部の違いや、地域社会の多様化が重要な検討事項になりました。
実際、同プロジェクトでは、全国のクラブに一つの形を当てはめるのではなく、変化する地域やローカルのニーズに対応できるクラブを目指しています。
だから、Club Rugbyを理解するときには、「NZではクラブとはこういうもの」と決めつけるよりも、
「このクラブは、この地域の中でどんな役割を持っているのだろう?」
と見ていく方が、その土地のラグビーをより深く理解できます。
6. 地域が変われば、クラブも変わっていく
地域社会は、時間とともに変わります。
人口が増える地域もあれば、減る地域もあります。
住んでいる人々の年齢や文化的背景も変化します。
ラグビーへの関わり方も、昔と同じとは限りません。
そしてクラブも、その変化と無関係ではいられません。
NZRの「Future of Rugby Clubs」では、クラブが地域とのつながりを保ち続けるために、参加方法、施設、運営、ほかのスポーツとの連携などを見直していく必要性が示されています。
その背景には、クラブ側の課題もあります。
2023年の最終報告では、全国のクラブ数が過去の最大約700から約450まで減少したことや、ボランティア不足、施設の老朽化、資金面、参加者の変化などが課題として挙げられました。
一方で、調査で順調に運営されていたクラブには、計画性のある運営や多様な視点を持つリーダーシップに加えて、地域との近い関係などの共通点も確認されています。
つまり、「地域に根づく」ということは、昔から同じことを続けるという意味ではありません。
地域とつながり続けるために、クラブ自身も変わっていく。
それも、現在のNZのClub Rugbyを理解するうえで大切な視点です。
CHAPTER 4|Club Rugbyから地域を見る
7. ローカルクラブへ行くと見えてくるもの
ニュージーランドでラグビーを見るなら、オールブラックスやスーパーラグビーの試合はもちろん魅力的です。
でも、機会があれば地域のClub Rugbyにも目を向けてみてください。
そこでは、トップレベルの試合とは違うものが見えてきます。
どんな人がグラウンドに来ているのか。
誰がチームを支えているのか。
家族やサポーターはどんなふうに過ごしているのか。
クラブルームには誰が集まっているのか。
そして、そのクラブはどんな地域の中にあるのか。
そんなところまで見ていくと、目の前の試合だけでは分からなかった、その土地の姿が少しずつ見えてきます。
ラグビークラブは、地域から切り離された存在ではありません。
地域の人たちがクラブに関わり、そのクラブがまた、人と人が出会うきっかけの一つになる。
Club Rugbyを知ることは、ラグビーという窓からニュージーランドの地域を覗いてみることでもあるのです。
