オールブラックスを見ていると、次に気になってくるのが、「この選手たちは普段、どこでプレーしているの?」ということ。
その答えのひとつが、スーパーラグビー・パシフィック(Super Rugby Pacific)です。
ブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、クルセイダーズ、ハイランダーズ。ニュージーランドの5チームを知ると、オールブラックスだけでは見えてこなかった選手、地域、州代表ラグビー、そして次世代の選手たちまでつながって見えてきます。
この記事では、スーパーラグビー・パシフィックとは何なのか、どんなチームが参加しているのか、大会はどう進むのか、そしてNZラグビーの中でどんな位置にあるのかを、初めて見る人にもわかるように解説します。
最後まで読めば、スーパーラグビーのことがよく分かり、自分なりの楽しみ方のヒントもきっと見つかるでしょう。
CHAPTER 1|まずスーパーラグビー・パシフィックを知る
1. スーパーラグビー・パシフィックとは何か
スーパーラグビー・パシフィックは、ニュージーランド、オーストラリア、フィジーのトップチームが参加するプロラグビー大会です。
ニュージーランド国内だけで完結する大会ではなく、それぞれの国・地域を拠点とするチームが国境を越えて戦います。
2027年は10チームで開催され、そのうちニュージーランドから参加するのは、
ブルーズ
チーフス
ハリケーンズ
クルセイダーズ
ハイランダーズ
の5チームです。
日本ではオールブラックスを知っていても、スーパーラグビー・パシフィックまでは詳しく知らないという人も多いかもしれません。
しかしNZラグビーを深く見ていくなら、スーパーラグビーはとても面白い入口です。
オールブラックスで見るスター選手だけでなく、これから代表を目指す選手や、それぞれの地域から育ってきた選手たちも同じ舞台でプレーしています。
オールブラックスからスーパーラグビーへ。
ここまで視野を広げると、NZラグビーの世界は一気に大きくなります。
2. オールブラックスとは何が違うのか
まず、ここを整理しておきましょう。
オールブラックスはニュージーランド代表。
一方、
ブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、クルセイダーズ、ハイランダーズはスーパーラグビーのチームです。
オールブラックスはニュージーランドを代表して、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチンなど各国の代表チームと戦います。
スーパーラグビー・パシフィックでは、NZの5チームが互いに戦いながら、オーストラリアやフィジーのチームともシーズンを通して対戦します。
つまり、オールブラックスでは同じ黒いジャージーを着る選手同士が、スーパーラグビーではライバルになることがあります。
「オールブラックスの選手」から「チーフスの選手」へ。
「オールブラックスの選手」から「ブルーズの選手」へ。
好きな代表選手が普段どこでプレーしているのかを知るだけでも、スーパーラグビーを見るきっかけになります。
3. 2027年から10チームへ|スーパーラグビー・パシフィックの現在
スーパーラグビーは長い歴史の中で、参加チームや大会形式を何度も変えてきました。
現在につながるスーパーラグビー・パシフィックは2022年にスタート。ニュージーランドとオーストラリアのチームに、フィジアン・ドゥルア(Fijian Drua)とモアナ・パシフィカ(Moana Pasifika)が加わった大会として始まりました。
そして2027年、再び大きな変化があります。
2026年まで参加していたモアナ・パシフィカが2027年大会には参加せず、10チーム制になります。
NZRは2026年6月、モアナ・パシフィカのライセンスを新しい運営主体へ移すことを承認しないと発表。長期的な事業計画と必要な資本の条件を満たす提案が得られなかったことを理由としています。
ただし、太平洋諸島を拠点とするチームの可能性そのものがなくなったわけではありません。
NZRは2027年より先については可能性を残しているとしており、持続可能な形が成立すれば、将来的に太平洋諸島を拠点とするチームや大会拡張を検討する姿勢を示しています。
この記事では、現在発表されている2027年大会を基準に仕組みを見ていきます。
CHAPTER 2|どんなチームが参加する?
4. 2027年の10チーム
2027年のスーパーラグビー・パシフィックは、10チームで開催されます。
ニュージーランド
- ブルーズ(Blues)
- チーフス(Chiefs)
- ハリケーンズ(Hurricanes)
- クルセイダーズ(Crusaders)
- ハイランダーズ(Highlanders)
オーストラリア
- ACTブランビーズ(ACT Brumbies)
- NSWワラターズ(NSW Waratahs)
- クイーンズランド・レッズ(Queensland Reds)
- ウェスタン・フォース(Western Force)
フィジー
- フィジアン・ドゥルア(Fijian Drua)
ニュージーランド 5 + オーストラリア 4 + フィジー 1 = 10
NZラグビーディスカバリーで特に注目していくのは、もちろんニュージーランドの5チームです。
5. ニュージーランドの5チーム
ニュージーランドには、北から南まで5つのスーパーラグビーチームがあります。
ブルーズ
オークランドを拠点とする、ニュージーランド北部と強いつながりを持つチーム。
チーフス
ハミルトンを拠点とし、ワイカトやベイ・オブ・プレンティなど北島中央部の地域と強いつながりを持つチーム。
ハリケーンズ
ウェリントンを拠点に、北島中央部から南部にかけての地域とつながるチーム。
クルセイダーズ
クライストチャーチを拠点とし、カンタベリーをはじめ南島北部・中央部の地域とつながるチーム。
ハイランダーズ
ダニーデンを拠点に、オタゴやサウスランドなど南島南部と強いつながりを持つチーム。
ここで重要なのは、5チームを単なる「プロチームの名前」として覚えなくてもいいということです。
それぞれのチームの奥には、地域があります。
チーフスからワイカトへ。
クルセイダーズからカンタベリーへ。
ハイランダーズからオタゴへ。
そこからさらに州代表ラグビー、クラブ、学校、地域コミュニティへと世界を広げることができます。
ただし、地域ラグビー協会とスーパーラグビーのチームが単純な1対1で対応しているわけではありません。
この関係についてはCHAPTER 4で詳しく見ていきます。
6. モアナ・パシフィカとは何だったのか
2027年の参加チーム一覧にはありませんが、スーパーラグビー・パシフィックを知るうえでモアナ・パシフィカも重要な存在です。
モアナ・パシフィカは、太平洋諸島の人々やコミュニティとの強いつながりを持つチームとして、2022年からスーパーラグビー・パシフィックに参加しました。
フィジアン・ドゥルアとともに、太平洋地域のラグビーの存在を大会の中でより大きく見せる存在となりました。
しかし2026年6月、NZRはモアナ・パシフィカのスーパーラグビー・パシフィックのライセンスを新たな運営主体へ移すことを承認しないと発表。
その結果、2027年はモアナ・パシフィカを除く10チームで大会が行われます。
一方で、NZRは将来の太平洋諸島を拠点とするチームについて可能性を残しています。
つまりモアナ・パシフィカは「なくなったチーム」として片付けるより、スーパーラグビー・パシフィックが太平洋地域とどうつながっていくのかを考えるうえで重要な存在として覚えておくとよいでしょう。
CHAPTER 3|大会はどう進む?
7. 2027年レギュラーシーズンの仕組み
2027年は大会方式も変わります。
レギュラーシーズンは17週間。
各チームはその間に16試合を行い、試合のない週(Bye)は1回。
2026年より各チームのレギュラーシーズンが2試合増え、開幕は2027年2月12日です。
そしてレギュラーシーズン終了後、その順位をもとにファイナルシリーズへ進むチームが決まります。
2027年からは、レギュラーシーズンで何位になるかがこれまで以上に重要になります。
8. ファイナルシリーズはどう決まる?
レギュラーシーズン終了時点の上位6チームがファイナルシリーズへ進出します。
ただし、全6チームが同じところからスタートするわけではありません。
1位・2位
準決勝へ直接進出
3位・4位
ホームでエリミネーション・ファイナル
- 3位 vs 6位
- 4位 vs 5位
5位・6位
アウェーでエリミネーション・ファイナル
そして勝者が準決勝へ進みます。
1位 vs エリミネーション・ファイナル勝者のうち順位が低いチーム
2位 vs エリミネーション・ファイナル勝者のうち順位が高いチーム
を戦い、その勝者がグランドファイナルへ進みます。
上位6チーム → ファイナルシリーズ進出
上位4チーム → 最初のファイナルをホームで戦える
上位2チーム → 準決勝へ直接進出
レギュラーシーズンでひとつでも上の順位を狙う意味が、非常に分かりやすい方式です。
2027年のグランドファイナルは6月26日に予定されています。
9. スーパーラウンドとは?
スーパーラグビー・パシフィックには、通常の試合とは少し違う楽しみ方もあります。
そのひとつがスーパーラウンド(Super Round)です。
複数の試合をひとつの都市・会場に集めて開催するイベントで、一度に複数のスーパーラグビーチームを見ることができます。
2026年にはクライストチャーチでスーパーラウンドが開催されました。
では、2027年も開催されるのでしょうか。
2026年9月現在、まだ確定とは言えません。
スーパーラグビー・パシフィックは2027年大会方式を発表した際、2026年のスーパーラウンドの成功を受け、翌年も大会カレンダーに組み込めるよう調整しているとしています。
したがって、この部分は今後の正式発表に合わせて更新します。
CHAPTER 4|NZラグビーの中でどこに位置する?
10. 州代表ラグビーとはどうつながる?
ここまで読むと、
「スーパーラグビーの5チームと、NPCなどの州代表ラグビーはどうつながっているの?」
という疑問が出てくるかもしれません。
ここがNZラグビーを理解するうえで、とても面白いところです。
ニュージーランドには26の地域ラグビー協会があり、その地域ラグビーの世界と、5つのスーパーラグビーチームを中心とするトップレベルの強化・育成環境がつながっています。
ただし、
地域ラグビー協会 = スーパーラグビーのチームの単純な下部組織
ではありません。
選手育成、アカデミー、州代表ラグビー、スーパーラグビーなど複数の仕組みが重なりながら、地域ラグビー協会、スーパーラグビーの各チーム、NZRが連携しています。
その関係がよく見えるのが、2026年にNZRが開始したSuper Rugby Development Programme(スーパーラグビー育成プログラム)です。
ブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、クルセイダーズ、ハイランダーズの育成チームが試合を行い、スーパーラグビー契約選手だけでなく、地域ラグビー協会の育成契約選手などにもプレーする機会を提供しています。
さらにスーパーラグビーと地域ラグビー協会双方のコーチが関わり、NZRはこの仕組みをアカデミー、州代表、スーパーラグビー・パシフィックをつなぐ橋渡しとして説明しています。
地域とスーパーラグビーは別々の世界ではありません。
選手やコーチ、育成の仕組みを通じてつながっています。
11. 選手はどうスーパーラグビーへ進むのか
では、ニュージーランドの若い選手はどうやってスーパーラグビーまで進んでいくのでしょうか。
全体像を理解するためのひとつのイメージとしては、
学校 / クラブラグビー
↓
地域ラグビー協会の育成環境 / アカデミー
↓
州代表ラグビー / 育成の機会
↓
スーパーラグビー
と考えると分かりやすくなります。
ただし、ここは重要です。
これは代表的な接続イメージであり、全員が同じ順序・同じルートを進むわけではありません。
選手によって成長する時期も、所属環境も、見出されるタイミングも違います。
実際、NZRが2026年に強化したU18 Pathways Programme(U18育成プログラム)では、学校やクラブからの推薦、地域ラグビー協会の育成キャンプ、地域ラグビー協会のアカデミー、スーパーラグビーの各チームなどをつないだ選手発掘・育成の仕組みが採用されています。
さらにスーパーラグビー育成プログラムでも、NZRは選手が異なるスピードで成長することを前提に、若手や将来性の高い選手へ高いレベルでの実戦機会を提供することを重視しています。
つまりNZの選手育成の道筋は、
「この学校に入れば、次はここ、その次はスーパーラグビー」
という一本の階段として見るより、
さまざまな場所で育った選手が、次のレベルへつながっていくネットワーク
として見る方が実態に近いのです。
12. スーパーラグビーとオールブラックス
そして、その先にあるのがオールブラックスです。
スーパーラグビー・パシフィックは、ニュージーランドのトップ選手たちが高いレベルで競い合う重要な舞台です。
オールブラックスだけを見ていると、基本的には「代表に選ばれた選手」が中心になります。
しかしスーパーラグビーまで見ると、
誰が好調なのか。
どんな若手が伸びているのか。
同じポジションで誰と誰が競っているのか。
オールブラックスでは仲間の選手同士が、普段はどう戦っているのか。
まで見えてきます。
2027年には、この関係が特に面白くなるポイントがあります。
史上初となるANZAC Dayのブレディスローカップ・テストマッチに向けたオールブラックスとワラビーズの代表メンバーは、スーパーラグビー・パシフィック第9節終了後に発表される予定です。
つまりシーズン序盤から、
「この選手はオールブラックスに選ばれるだろうか?」
という視点でもスーパーラグビーを楽しめます。
ただし、スーパーラグビーは単なる「オールブラックスの下部リーグ」ではありません。
独立した大会として、チーム、タイトル、ライバル関係、ファン、歴史があります。
オールブラックスにつながる舞台として見る。
そして、
スーパーラグビーそのものを楽しむ。
どちらもできるのが、この大会の面白さです。
CHAPTER 5|自分なりのスーパーラグビーを見つける
13. どのチームを応援したらいい?
スーパーラグビーを初めて見ると、
「5チームのうち、どこを応援したらいいんだろう?」
と思うかもしれません。
でも、最初からチームの歴史や選手を全部覚える必要はありません。
入口はいくつもあります。
好きなオールブラックス選手から選ぶ
好きなオールブラックス選手がいるなら、その選手がスーパーラグビーで所属するチームを見てみる。
おそらく一番入りやすい方法です。
オールブラックス → 選手 → スーパーラグビーのチーム
とひとつ世界が広がります。
訪れたことのある街から選ぶ
ニュージーランドへ行ったことがあるなら、街から選ぶのも面白い方法です。
オークランド → ブルーズ
ハミルトン → チーフス
ウェリントン → ハリケーンズ
クライストチャーチ → クルセイダーズ
ダニーデン → ハイランダーズ
「あの街のチーム」というだけで、試合を見る理由がひとつ生まれます。
地域から選ぶ
もう一歩深く知りたいなら、地域から選んでみましょう。
ワイカトが気になるからチーフス。
カンタベリーが好きだからクルセイダーズ。
オタゴに縁があるからハイランダーズ。
そこから州代表ラグビーや地元クラブまでたどれば、スーパーラグビーの奥にある地域のラグビー文化も見えてきます。
プレースタイルから選ぶ
そして、理屈ではなく実際に試合を見て決めるのもおすすめです。
攻撃の仕方、選手の個性、試合のテンポ。
「このチームのラグビーは見ていて面白い」
と思ったら、それだけでも十分な理由です。
選手から。街から。地域から。ラグビーそのものから。
自分に合った入口を見つければ、スーパーラグビーはもっと身近になります。
14. ライバル関係から見る
好きなチームができると、次に面白くなるのが対戦相手との関係です。
NZの5チームは、同じニュージーランドのチームでありながらスーパーラグビーではライバル。
地域を背負い、シーズンを通して順位を争います。
そして試合が終われば、その中からオールブラックスで同じチームになる選手もいます。
スーパーラグビーでは敵。オールブラックスでは仲間。
この関係を知ると、代表戦だけを見ていたときとは違う選手同士のストーリーが見えてきます。
さらにオーストラリア勢やフィジアン・ドゥルアとの対戦まで広げれば、スーパーラグビー・パシフィックという大会全体の個性も少しずつ分かってきます。
15. 好きな選手からNZラグビーをたどる
もうひとつおすすめしたいのが、好きな選手を逆にたどってみることです。
オールブラックスで気になる選手を見つけたら、
オールブラックス
↓
スーパーラグビーのチーム
↓
州代表ラグビー
↓
クラブ / 学校
↓
地域
と、その選手のラグビーとのつながりを調べてみる。
もちろん、すべての選手がこの順番でキャリアを歩んできたわけではありません。
だからこそ、
「この選手はどこから来たんだろう?」
という疑問そのものが、新しい発見につながります。
ひとりの選手から、知らなかった街を知る。
地域ラグビー協会を知る。
学校やクラブを知る。
そして、その地域のラグビー文化まで知る。
選手ひとりからでも、NZラグビーの世界を広げていくことができます。
16. スーパーラグビーから、もっとNZラグビーへ
ここまで来れば、スーパーラグビー・パシフィックはもう単なる「海外のプロラグビー大会」ではないはずです。
ブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、クルセイダーズ、ハイランダーズ。
それぞれのチームには選手がいて、その奥には地域があり、州代表ラグビーがあり、学校やクラブがあります。
そしてスーパーラグビーからオールブラックスを見ることもできます。
逆に、オールブラックスからスーパーラグビーへ入り、そこから地域へたどることもできます。
オールブラックス → スーパーラグビー
スーパーラグビー → 州代表ラグビー
選手 → クラブ / 学校
チーム → 街・地域
入口はひとつではありません。
まずは、自分が少し気になるものをひとつ見つけてみてください。
そこから次の疑問が生まれたら、その疑問を追ってみる。
それが、NZラグビーをもっと面白く知っていく一番自然な方法です。
スーパーラグビーからさらに世界を広げてみたくなった人は、次は以下からニュージーランドラグビー全体を見渡してみましょう。
