日本とニュージーランドのラグビーには、どのようなつながりがあるのでしょうか。
オールブラックスと日本代表の試合だけでなく、Māori All Blacks、プロチーム、選手、女子、セブンズ、育成など、その関係はさまざまな方向へ広がっています。
日本とNZのラグビーを深く見ていくと、二つの国の間にあるのは「試合」だけではなく、人やチーム、組織を通じて少しずつ広がってきた関係であることが見えてきます。
最後まで読めば、代表戦だけでは見えてこない、日本とニュージーランドのラグビーのさまざまなつながりが見えてきます。
CHAPTER 1|日本とNZラグビーの関係を知る
日本とニュージーランドはどうつながっている?
日本とニュージーランドのラグビーと聞いて、まずオールブラックスと日本代表の試合を思い浮かべる人は多いでしょう。
しかし、両国の関係はそれだけではありません。
代表チームだけでも、オールブラックスだけでなく、Māori All BlacksやAll Blacks XVなどが日本との試合を行ってきました。
さらに視野を広げれば、日本でプレーするNZ出身選手、プロチーム同士の関係、女子、セブンズ、育成、学校やクラブなど、いくつもの接点があります。
つまり、日本とNZのラグビーには一つのつながりがあるのではなく、代表、チーム、選手、コーチ、育成、地域など、複数のレベルで関係が生まれていると考える方が、その全体像を理解しやすくなります。
KEY POINT
日本とNZのラグビーを見るときは、「日本代表とオールブラックス」だけでなく、その周りに広がるさまざまな関係を見ることが重要です。
NZRとJRFUの関係
その大きな枠組みをつくっているのが、ニュージーランドラグビー(NZR)と日本ラグビーフットボール協会(JRFU)の関係です。
2023年5月、両協会は関係をさらに深め、アジア太平洋地域でラグビーを成長させていくためのMemorandum of Understanding(MoU/基本合意書)を締結しました。
これは「オールブラックスを日本へ呼ぶ」という一つの企画だけを決めたものではありません。
代表チームの試合をはじめ、プロラグビー、セブンズ、女子ラグビー、戦略・商業面など、両国がより広く協力していくための枠組みです。
2023年のMoUで何が決まった?
MoUで特に分かりやすいのが、代表チーム同士の交流です。
NZRとJRFUは、2024年から2027年にかけて、オールブラックス、All Blacks XV、Māori All Blacksと、Brave Blossoms(日本代表)やJapan XVが日本で定期的に試合を行う方針を示しました。
さらに、今後の可能性を検討する項目として、
NZのSuper RugbyチームとJapan Rugby League One
All Blacks Sevens / Black Ferns Sevensと日本のセブンズ
日本の女子選手がSuper Rugby AupikiやFarah Palmer Cupでプレーする機会
戦略・商業面での協力
なども挙げられています。
ここで重要なのは、これらすべてがすでに実施されると決まったわけではないことです。
一方で、両国が代表戦だけでなく、プロチーム、女子、セブンズなどへ関係を広げようとしていることは、このMoUから明確に読み取れます。
CHAPTER 2|代表チームを通じたつながり
オールブラックスと日本代表
両国の関係の中で、最も分かりやすい存在がオールブラックスです。
日本でオールブラックスが試合をすれば、大きな注目が集まります。
しかし、ここを「世界的に有名なチームが日本へ来る」という話だけで終わらせる必要はありません。
オールブラックスの試合をきっかけに一人の選手を知り、その選手が所属するスーパーラグビーのチームを知る。
さらに、そのチームがつながる地域や、NZのラグビー文化へ興味を広げていくこともできます。
オールブラックスは、日本のラグビーファンがNZラグビーのより大きな世界へ入っていく入口にもなります。
Māori All BlacksとJapan XV
近年、特に交流が続いているのがMāori All Blacks(マオリ・オールブラックス)とJapan XVです。
2024年には日本で2試合を行い、2025年にも東京で対戦しました。
さらに2026年6月には名古屋で再び対戦し、両チームの対戦は1981年の初対戦から通算7回目、直近3年間では4回目となりました。
こうした継続的な試合は、日本とNZの関係が一度限りのイベントではないことを示しています。
Māori All Blacksとの交流が面白いのは、試合だけではありません。
Māori All Blacksは、Māoriのアイデンティティや文化とも深く結びついた代表チームです。
日本で彼らを見ることは、NZラグビーのプレースタイルだけでなく、その背景にある文化へ触れる機会にもなります。
All Blacks XVなどへ広がる交流
NZには、オールブラックス以外にも複数の代表チームがあります。
All Blacks XVは、NZRがオールブラックスに次ぐシニア代表チームとして位置づけているチームです。
2023年には日本へ遠征し、Japan XVと日本代表との2試合を行いました。
こうしたチームが日本と試合をすることで、世界最高峰の代表選手だけでなく、その次のレベルや、これからさらに上を目指す選手たちまで含めて両国が接点を持つことができます。
これも、日本とNZのラグビー関係を見るうえで重要な部分です。
CHAPTER 3|プロラグビーを通じたつながり
スーパーラグビーと日本
代表チームから一段下を見ると、NZにはスーパーラグビー・パシフィックがあります。
ブルーズ、チーフス、ハリケーンズ、クルセイダーズ、ハイランダーズというNZ5チームは、多くのトップ選手がプレーするプロチームです。
2023年のMoUでは、スーパーラグビーの通常の大会期間外に、NZのSuper RugbyチームとJapan Rugby League Oneのチームが試合を行う機会について検討することも盛り込まれました。
つまり、代表対代表だけでなく、プロチーム対プロチームという接点も、両国の関係を広げる可能性があります。
日本でプレーするNZの選手たち
国同士の関係は、協会やチームだけでつくられるものではありません。
NZで育った選手が日本へ渡り、日本のチームでプレーすることも、人を通じた大きな接点になります。
選手が移動すれば、プレースタイルやトレーニングの考え方だけでなく、人間関係や文化も一緒に動きます。
そして日本でプレーした選手がNZへ戻れば、日本での経験や人との関係がNZ側へ持ち帰られることもあります。
選手一人の移動も、日本とNZのラグビーをつなぐ一つのルートです。
日本からNZへ広がる可能性
この関係は、NZから日本への一方向だけではありません。
日本の選手がNZでプレーする。
コーチがNZで学ぶ。
若い選手がラグビーキャンプやアカデミーへ参加する。
学校やクラブがNZのチームと交流する。
こうした動きも、日本とNZをつなぐ接点になります。
2023年のMoUにも、日本の女子選手がNZのSuper Rugby AupikiやFarah Palmer Cupでプレーする機会について協議することが盛り込まれています。
両国の関係を考えるなら、NZ → Japanだけでなく、Japan → NZを見ることも重要です。
CHAPTER 4|女子・セブンズ・育成へ
女子ラグビー
女子ラグビーも、両国の関係が広がる可能性のある分野です。
NZにはBlack Fernsをはじめ、Super Rugby AupikiやFarah Palmer Cupなど、女子選手がプレーするさまざまな環境があります。
2023年のMoUでは、日本のトップ女子選手がAupikiやFarah Palmer Cupでプレーする機会について協議することが明記されました。
これは、日本とNZの関係を男子代表だけで考えないためにも重要です。
次の記事では、NZ女子ラグビーそのものの世界を詳しく見ていきます。
セブンズ
セブンズも両国をつなぐもう一つの世界です。
NZにはAll Blacks SevensとBlack Ferns Sevensがあり、日本にも男女のセブンズ代表があります。
MoUでは、既存大会以外でもNZと日本のセブンズチームが試合を行う機会について検討するとしています。
15人制だけを見ると見落としてしまいますが、セブンズまで視野を広げることで、両国の接点はさらに増えていきます。
選手育成とラグビー留学
さらに身近なレベルまで下りると、育成という大きなテーマがあります。
NZでラグビーを学びたい日本の選手。
日本との関係をつくりたいNZのコーチや育成組織。
キャンプ、アカデミー、学校、クラブなどを通じて、代表チームとは違う形の交流も生まれます。
前の記事で見たように、NZの選手育成は学校だけで完結していません。
クラブ、地域ラグビー協会、Academy、年代別育成など、さまざまな環境があります。
その仕組みを知ることは、日本からNZでラグビーを経験したい人にとっても重要です。
学校・クラブ・地域で生まれる交流
国際関係という言葉を聞くと、協会同士の契約や代表戦のような大きな話を想像しがちです。
しかし、ラグビーの関係はもっと小さな場所からも生まれます。
一つの学校と一つの学校。
一つのクラブと一つのクラブ。
一人のコーチと一人のコーチ。
一人の選手と一人の選手。
こうした関係はニュースにならないこともあります。
それでも、人が実際に会い、一緒にラグビーをし、相手の文化を知ることで生まれる関係は、両国のラグビーをつなぐ大切な部分です。
CHAPTER 5|試合から、人のつながりへ
日本とNZの関係はどこへ向かう?
2023年のMoUを見ると、日本とNZのラグビー関係にはまだ多くの可能性があります。
代表戦だけではありません。
Super RugbyとLeague One。
女子ラグビー。
セブンズ。
そして、その公式な枠組みの外側にも、選手、コーチ、学校、クラブ、地域などを通じた交流があります。
大切なのは、これらを別々の出来事として見るのではなく、日本とNZのラグビーの間に少しずつ増えている接点として見ることです。
日本からNZラグビーの世界へ
日本のラグビーファンにとって、オールブラックスはNZラグビーへの分かりやすい入口です。
しかし、その先にはスーパーラグビーがあります。
さらに州代表ラグビー、クラブ、学校、ジュニア、育成、女子、セブンズ、Māori rugby、地域文化があります。
一つの試合をきっかけに、一人の選手を知る。
その選手のチームを知る。
そのチームの地域を知る。
そこからNZラグビーの世界が広がっていく。
それが、NZラグビーディスカバリーがつくっていきたい入口でもあります。
NZから日本へ
そして、この関係は逆方向にも広がります。
NZの選手やコーチ、チーム、クラブ、育成組織にとっても、日本はラグビーを通じて新しい関係をつくれる場所です。
近年、Māori All BlacksとJapan XVの対戦が繰り返されていることからも、両国の関係が継続していることが分かります。
しかし、国と国の関係を実際につくっていくのは、協会だけではありません。
選手、コーチ、クラブ、学校、地域、そしてラグビーを通じて出会う一人ひとり。
そうした接点が増えるほど、日本とNZのラグビーの世界はもっと近くなっていきます。
そして、その間には、まだ知られていない面白い世界がたくさんあります。
