ニュージーランドの女子ラグビーと聞いて、Black Ferns(ブラックファーンズ)を思い浮かべる人は多いでしょう。
しかし、その黒いジャージーの奥には、地域のクラブや学校、州代表ラグビー、Super Rugby Aupiki、そして年代別の育成まで、もっと大きな女子ラグビーの世界があります。
Black Fernsは、その世界の頂点にある一つのチームです。
最後まで読めば、Black Fernsだけでは見えてこない、地域のクラブや学校からFarah Palmer Cup、Super Rugby Aupiki、代表チームへ広がるNZ女子ラグビーの全体像が分かるでしょう。
CHAPTER 1|NZの女子ラグビーを知る
ニュージーランドの女子ラグビーとは?
ニュージーランドの女子ラグビーは、代表チームだけで成り立っているわけではありません。
地域でラグビーを始める。
学校やクラブでプレーする。
地域の代表選手としてFarah Palmer Cupでプレーする。
Super Rugby Aupikiというトップレベルの大会へ進む。
そして、Black Fernsを目指す選手もいます。
さらに、年代別の育成やBlack Ferns XVなど、選手がより高いレベルを経験するための環境もあります。
もちろん、すべての選手が同じ道を通るわけではありません。
地域、学校、クラブ、州代表、トップレベル、代表など、複数の環境がつながっている。
そう考えると、NZ女子ラグビーの全体像が見えやすくなります。
Black Fernsだけが女子ラグビーではない
Black Fernsは、ニュージーランド女子15人制の代表チームです。
世界のトップレベルで戦うBlack Fernsは、NZ女子ラグビーを象徴する存在でもあります。
しかし、男子ラグビーをオールブラックスだけでは理解できないのと同じように、NZ女子ラグビーもBlack Fernsだけを見ていては全体像は見えてきません。
その選手は、どこでラグビーを始めたのか。
どのクラブや学校でプレーしたのか。
どの地域を代表したのか。
どのような育成環境を経験したのか。
そうやって一段ずつ下へたどっていくと、Black Fernsの奥にあるNZ女子ラグビーの世界が見えてきます。
KEY POINT
Black FernsはNZ女子ラグビーそのものではなく、地域、学校、クラブ、州代表、育成などにつながる大きな世界への入口です。
NZではどれくらいの女性・女の子がラグビーをしている?
女子ラグビーは、NZの地域ラグビーにとっても大きな存在になっています。
NZRによると、2025年には34,105人の女性・女子選手が地域ラグビーに登録しました。
これはNZRの記録で過去2番目に高い水準です。
一方、2025年には登録・大会管理システムがRugby Xplorerへ変更されました。その影響もあるため、過去の数字とは単純に比較しない方がよいでしょう。
ここで重要なのは数字そのものだけではありません。
Black Fernsの奥には、実際に各地域でラグビーをしている多くの女性や女の子がいる。
その存在が、NZ女子ラグビーの土台になっています。
CHAPTER 2|女子選手はどこでラグビーをする?
ジュニア・学校からラグビーを始める
女子選手がラグビーと出会う場所は一つではありません。
地域のジュニアラグビーから始める子もいれば、学校などでラグビーを始める選手もいます。
また、コンタクトを伴わないラグビーなど、さまざまな形で競技に触れることもできます。
つまり、「女子ラグビーを始める特別な入口が一つある」わけではありません。
NZの地域ラグビーの中には、女子選手がラグビーと出会うさまざまな入口があります。
地域のクラブでプレーする
NZ女子ラグビーを理解するうえで、地域のクラブも重要です。
クラブは、トップ選手になるためだけの場所ではありません。
ラグビーを始めたい人。
友人と一緒にプレーしたい人。
学校を卒業してもラグビーを続けたい人。
より高いレベルを目指したい人。
さまざまな目的を持った選手が、地域のクラブを通じてラグビーに関わります。
そして、そこから地域代表やさらに上のレベルへ進む選手もいます。
女子ラグビーでも、地域のクラブは「競技」と「コミュニティ」が出会う場所の一つです。
初心者からコンタクトラグビーへ
女子ラグビーの入口を考えるとき、もう一つ知っておきたいのが、初めてコンタクトラグビーを経験する選手の存在です。
すべての選手が幼い頃からタックルを経験しているわけではありません。
NZRには、こうした女子選手を対象としたContact Ready(コンタクト・レディ)というプログラムがあります。
12〜17歳で、ラグビーを始めたばかりの選手、最初の1年をプレーしている選手、コンタクトのない形式から移行する選手などを対象としています。
タックルする、タックルされる、安全に地面へ倒れるといった基本を段階的に学び、コンタクトラグビーへ移るための技術と自信を身につけていきます。
これは、NZ女子ラグビーが「すでにラグビーができる選手」だけの世界ではないことを示す一例です。
CHAPTER 3|地域からトップレベルへ
Farah Palmer Cupとは?
クラブや学校からさらに上のレベルを見ると、Farah Palmer Cup(ファラー・パーマー・カップ)があります。
これは、NZの女子州代表ラグビーを代表する大会です。
各地域を代表するチームが参加するため、NZ女子ラグビーを「地域」から見るうえでも重要な大会です。
2026年は12チームが参加し、PremiershipとChampionshipという2つのプールに6チームずつ分かれて競います。
ここで大切なのは、大会名だけを覚えることではありません。
Farah Palmer Cupまでたどると、地域のラグビーとトップレベルの女子ラグビーがどのようにつながっているのかが見えやすくなります。
Super Rugby Aupikiとは?
さらにトップレベルを見ると、Super Rugby Aupiki(スーパーラグビー・アウピキ)があります。
NZのトップ女子選手たちが集まる、国内最高レベルの重要な大会です。
2026年は6月から7月にかけて6ラウンドとFinalが行われ、その王者はオーストラリアのSuper Rugby W王者とTrans-Tasman Finalで対戦する日程が組まれました。
つまり、AupikiはNZ国内だけを見る大会ではありません。
オーストラリアとのトップレベルの接点も持っています。
4つのAupikiチーム
2026年のSuper Rugby Aupikiには4チームが参加しました。
Blues
Chiefs Manawa
Hurricanes Poua
Matatū
Black Fernsだけを見ていたときには「ニュージーランド女子代表」という一つのチームに見えていた世界も、Aupikiまで下りていくと、それぞれのチームや地域へと分かれて見えてきます。
一人のBlack Ferns選手からAupikiの所属チームへ。
さらに地域やクラブへ。
そうやって下へたどっていけることが、NZ女子ラグビーを知る面白さの一つです。
CHAPTER 4|Black Fernsへつながる世界
Black Fernsとは?
Black Ferns(ブラックファーンズ)は、ニュージーランド女子15人制の代表チームです。
NZ女子ラグビーのトップに位置し、世界のトップレベルで戦っています。
しかし、ここまで見てきたように、Black Fernsが単独で存在しているわけではありません。
選手たちの背景には、学校、クラブ、地域代表、Aupiki、育成環境など、それぞれ異なるラグビーの経験があります。
だからこそ、Black Fernsを見るときに一人の選手の所属チームや出身地域まで知ると、試合の見え方も変わってきます。
Black Ferns XVとは?
Black Ferns以外にも、NZにはBlack Ferns XVがあります。
NZRはBlack Ferns XVを、女子のプロフェッショナルな選手育成の重要な一部として位置づけています。
選手にとっては、より高いレベルの環境で経験を積み、成長していく機会の一つになります。
つまり、女子のトップレベルも、
「Black Fernsに選ばれるか、選ばれないか」
という単純な二択ではありません。
その周りにも、選手が経験を積み、次のレベルへ挑戦するための環境がつくられています。
年代別育成へ広がる女子ラグビー
若い女子選手の育成環境も広がっています。
NZRではU18やU20の育成プログラムなどを通じて、若い選手がより高いレベルのトレーニングや選考環境を経験する機会をつくってきました。
そして2026年9月には、新たにNew Zealand Women’s U21が発表されました。
2026年10月31日に、オーストラリアのAustralia NextGenとクライストチャーチで対戦する予定です。
NZRとRugby Australiaによると、両国にとって女子の年代別代表チームによる初めての国際試合になります。
こうした動きを見ると、NZ女子ラグビーの育成構造は完成した固定的なものではありません。
今も新しい道がつくられている途中です。
CHAPTER 5|成長を続けるNZ女子ラグビー
Women & Girls Strategy 2023–2033
NZRは女子ラグビーの成長を、短期的なブームとしてだけ捉えているわけではありません。
2023年には、New Zealand Women & Girls in Rugby System Strategy 2023–2033がスタートしました。
これは、女性や女子がより広いラグビーコミュニティに継続的に関われる環境をつくるための、10年間の方針です。
重要なのは、対象がトップ選手だけではないことです。
選手としてプレーする。
コーチになる。
レフェリーになる。
クラブや地域でラグビーに関わる。
女子ラグビーの成長とはBlack Fernsを強くすることだけではなく、女性や女子がラグビーのさまざまな場所に関われる環境を広げることでもあります。
女子ラグビーは今も変化している
NZ女子ラグビーを理解するときに覚えておきたいのは、その仕組みが今も変化していることです。
Super Rugby Aupikiの大会構造。
Farah Palmer Cup。
年代別育成。
Black Ferns XV。
そして、新しく生まれたWomen’s U21。
こうした仕組みは今後も変わっていく可能性があります。
だからこそ、現在の大会名やチーム数だけを覚えるのではなく、女子選手がラグビーを始め、続け、より高いレベルへ挑戦できる環境そのものが広がっているという大きな流れを見ることが重要です。
Black Fernsから地域を見ると、もっと面白い
Black Fernsを入口にNZ女子ラグビーを知る。
一人の選手に興味を持つ。
その選手がプレーするAupikiのチームを見る。
さらに、その選手が代表した地域やクラブを知る。
そこまでたどると、Black Fernsだけを見ていたときには見えなかったNZ女子ラグビーの世界が広がります。
Black Fernsの黒いジャージーの奥には、地域のクラブ、学校、選手、コーチ、家族、ボランティア、そして次の世代の女子選手たちがいます。
女子ラグビーを知ることは、Black Fernsについて詳しくなることだけではありません。
その奥に広がる、ニュージーランドラグビーのもう一つの大きな世界を知ることでもあります。
